KuaishouがKling Omni Director公開:参考動画のカメラワークをそのまま複製
Kuaishou(快手)のKling研究チームが「Omni Director」の研究プレビューを公開した。テキスト指示に頼らず、参考動画からカメラの動きやカット割り、バレットタイムなどの撮影効果を抽出して静止画から動画を生成できる。現在はまだ一般公開されていない。
AI動画生成を触ったことがある人なら、思い通りのカメラワークを指定する難しさは身に染みているはずです。映画のようなクレーン撮影を狙って「ゆっくりズームインしながらチルトアップ」とテキストで指示しても、画面全体がぐにゃりと歪んだり、カメラがあらぬ方向へ飛んでいったりするのが関の山でした。
テキストは本来、複雑なカメラの運動軌跡を伝える道具ではありません。今週、Kuaishou(快手)のKling研究チームが公開した研究プレビュー「Omni Director」は、そんなもどかしい操作を一変させようとしています。
使い方は単純明快で、言葉で説明する代わりに、使いたいカメラワークの参考動画と静止画を1枚渡すだけです。
カット割りから特殊効果までまるごと再現
Omni Directorは参考動画からカメラの移動軌跡や速度を抽出し、その挙動をそのまま使って新しい静止画から動画を生成します。
単なる左右のパンや拡大縮小にとどまりません。急降下するドローン撮影や、めまいを誘うドリーズーム、マトリックス風のバレットタイム、さらには魚眼レンズ特有の湾曲収差までしっかり再現します。
特に注目すべきは、カット割りや編集リズムの理解力です。参考動画に複数のショットが含まれている場合、Omni Directorは生成後の動画にもまったく同じタイミングでカットを反映します。
公式の作例では、バイク乗りの三人称視点から一人称視点へと切り替わる映像をもとに、空を飛ぶワシの三人称から一人称へのカット切り替えを完璧に再現してみせました。海外メディアのTheoretically Mediaによると、映画『マッドマックス:フュリオサ』の重厚なクレーンワークを拝借した作例も披露されていたといいます。
もちろん初期の研究プレビューゆえの粗さもあり、人物の腕が背後のプロペラの回転に釣られて動いてしまうような珍現象も報告されています。それでも、実際のカメラワークをそのまま移植できる安定感は群を抜いています。
なぜ重要か
AI動画生成の主戦場は、画質の綺麗さから「監督としてのコントロール性」へと移りつつあります。
これまでのカメラ制御はプロンプトによる運任せの要素が強く、狙った構図を出すために何十回も再生成を繰り返すのが当たり前でした。Omni Directorのように既存の映像からカメラワークを直接コピーできれば、プロの映像制作や絵コンテの現場で実用性が一気に跳ね上がります。
映画やCM、ゲームのワンシーンで気に入ったカメラワークを見つけたら、それをそのままリファレンスとして流用できるわけです。複雑な3Dソフトを使わなくても、高度なカメラパスを数秒で検証できるようになります。
ただし、現時点でOmni Directorは研究チーム(KwaiVGI)によるプレビュー段階にすぎません。ページ上にコード用ボタンは用意されているものの、実際のコードやモデルウェイトはまだ公開されておらず、一般ユーザーが今すぐ試せる状態ではありません。それでも、次の大型アップデートでどのような機能が標準装備されるのかを占う意味で、見逃せない一歩です。
情報源 (1)
- theoreticallymedia.com(新しいタブで開きます)原文theoreticallymedia.com