香港大、AIが自給自足する経済実験環境「ClawWork」公開 API費が尽きれば破産
香港大学データインテリジェンス研究室は、AIエージェントの経済的持続性をテストする環境「ClawWork」を公開した。AIは初期資金10ドルのみを与えられ、API代を自腹で払いながら44業種の仕事をこなして稼ぐ必要があり、赤字なら破産する。単なるベンチマークを超え、実用性と費用対効果を直接測れる点が注目される。

もしAIエージェントに初期資金10ドルだけを渡し、API利用料を自腹で払わせながら仕事をさせたら、生き残ることはできるでしょうか。
大半のベンチマークはAIがペーパーテストを解けるかばかりを競い、1回の呼び出しにいくらかかるかは気にしません。香港大学データインテリジェンス研究室は2026年2月15日、AIを過酷な模擬経済環境に放り込み、自給自足させる新プロジェクト「ClawWork」を公開しました。
赤字になれば即破産
ClawWorkの基本ルールは極めてシビアです。エージェントは10ドルの残高からスタートし、思考や検索、出力を行うたびに発生するトークン費用がリアルタイムで差し引かれます。手元資金が尽きれば、その時点で破産と判定されます。
生き残る唯一の方法は、実務をこなして報酬を得ることです。システムは「GDPVal」データセットをベースにしており、製造業の調達、財務分析、医療管理、法務など44業種・220件の専門業務をAIに割り当てます。成果物はWord文書やExcelシート、PDFといった実用ファイルでの提出が求められます。
提出物はGPT-5.2によって業界別の基準に沿って採点され、米労働統計局の賃金データに基づく報酬が支払われます。公開された実験では、トップクラスのエージェントが時給換算1500ドル以上の稼ぎを叩き出し、7時間で1万ドルを稼いだ事例も報告されています。
さらにエージェントは、目先の小遣い稼ぎのために働くか、将来の成果を高めるために学習へ投資するかという、人間さながらのキャリアの選択にも直面します。
リアルタイムで残高を追跡
ClawWorkは軽量なNanobotアーキテクチャを採用しており、ローカル環境で数コマンド実行するだけでReact製のダッシュボードが立ち上がります。AIの残高推移やタスク消化状況、生存指標を画面上でリアルタイムに監視できます。
すでにClaude Sonnet 4.6やGemini 3.1 Pro、Qwen-3.5-Plus、Qwen3-Max、Kimi-K2.5、GLM-4.7など複数のモデルに対応しています。費用計算も概算ではなく、思考トークンを含むAPIレスポンスの実際の課金データを取得して追跡する徹底ぶりです。
これにより、どのモデルが真の意味でコストパフォーマンスに優れた「優秀な社員」であるかを、実務の損益計算書から直接判定できます。
なぜ重要か
私たちは、この経済的圧力を導入するアプローチが非常に賢い一手だと考えます。企業がAIを現場に導入する際に最も知りたいのは、学術テストのスコアではなく、発生するAPIコストに見合う利益を生み出せるかという費用対効果です。ClawWorkはその疑問に正面から答えています。
開発者や導入企業にとっては、実務における隠れた無駄をあぶり出す鏡になります。いくら推論性能が高くても、長大な思考トークンや無駄な検索を繰り返してコストが嵩めば、ビジネス上は赤字を生む不良資産になってしまいます。ClawWorkを使えば、導入前にリアルな採算性を検証できます。
もちろん課題もあります。成果物の評価と報酬の支払いをGPT-5.2に委ねているため、人間の気まぐれで厳しい検収基準をどこまで正確に再現できているかには疑問の余地が残ります。それでも、AIを単なる回答マシンから自立したデジタル労働者として捉え直し、経済性で評価する試みは今後の業界基準を変える契機になるはずです。
情報源 (1)
- github.com(新しいタブで開きます)原文github.com