GrimesがAI音声ソフト「Elf.Tech」公開、自身の声を提供し印税50%分配
今週、アーティストのGrimesがAI音声ソフトウェア「Elf.Tech」を公開した。音声をアップロードすると彼女特有の歌声に変換でき、楽曲制作に利用できる。原盤印税を50%シェアすれば商用配信も可能だ。権利侵害を阻止するのではなく、自身の声をオープンソース化して収益を分け合う試みとして注目される。

生成AIによる歌声の模倣に対して多くのアーティストが法的措置を検討するなか、カナダ出身のアーティストGrimes(本名クレア・バウチャー)は全く逆の行動に出ました。自分の歌声を公式にAI化し、一般向けに開放したのです。
今週公開された新プラットフォーム「Elf.Tech」は、ユーザーが自分の歌声を録音してアップロードすると、アルゴリズムによってGrimes特有の浮遊感あるボーカルへと変換してくれるサービスです。出来上がったボーカルを電子ビートとミックスすれば、本人と聞き紛うような楽曲を制作できます。
声をオープンソース化し、印税は折半
Grimesはこの取り組みを慈善事業として行っているわけではありません。
Twitterでの発表によると、このAI音声を使って制作した楽曲をリリースする場合、マスター音源の印税の50%を彼女側に支払う必要があります。その代わり、制作者は公式に「feat. Grimes」とクレジットすることができ、配信の手続きもサポートされます。
出版印税(著作権使用料)の分配については、まだ保証はできないものの、調整を試みている段階だとしています。
マネージャーのダウダ・レナード氏がRolling Stone誌に語ったところによると、Grimesは創造性を「過去と未来の対話」と捉えており、授かった才能を独占するのではなくオープンソース化することで、どのような新しい表現が生まれるかを見届けたいという考えがあるようです。
なぜ重要か
大手レーベルがAIによる海賊版の削除要請に追われるなか、Grimesが示したのは極めて実利的なアプローチです。
個人の音楽プロデューサーにとって、トップアーティストの声を自作曲に合法的に起用できるハードルは劇的に下がりました。前払いのギャラなしで強力なボーカル素材が手に入り、収益が出た場合のみ50%をシェアすればよい仕組みは、試す価値が十分にあります。
業界全体にとっても、AIの締め出しが技術的に困難である以上、公式が高品質なツールを提供して収益分配システムを構築する方が合理的であることを示しました。他のアーティストも追随する可能性があります。
一方で課題もあります。大量の低品質なAI楽曲が市場に溢れることで、Grimes自身のアーティストブランドが希釈されるリスクは避けられません。それでも、権利侵害に怯えるのではなく主導権を握りに行く姿勢は、音楽ビジネスにおける一つの重要な実験と言えます。
情報源 (1)
- gizmodo.com(新しいタブで開きます)原文gizmodo.com
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