GoogleがGemini 4 Argon発表、出力上限100万トークンで長文推論と防衛に特化
Googleはフロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表した。出力トークン上限を従来の64Kから100万トークンに大幅拡張し、大規模なコード移行や脆弱性検知など長時間の推論に対応する。現在は一部のセキュリティ専門家向けに先行提供されている。

数百万トークンの文書をAIに読み込ませる技術は普及しましたが、モデル側に数十万字のコードや長文を一気に書き出させようとすると、途中で破綻するのがこれまでの限界でした。
Googleは新たなフロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表しました。最大の特徴は、単一の回答で出力できる上限を従来の64Kから一挙に100万トークンへと引き上げた点です。英単語にして約70万語を一度に生成できる計算になります。
推論性能も大幅に引き上げられており、実践的なソフトウェア開発タスクを測る「DeepSWE v1.1」で77.9%、業務自動化を評価するZapierの「AutomationBench」で51.3%を記録。Google自身の比較検証では、19のベンチマーク中13項目でGPT-6 AstraやClaude Opus 5.5を上回ったとしています。
社内インフラのRust移行とメモリ削減
GoogleはArgonを一般公開する前に、まず自社の極めて重い社内業務に投入しました。
代表的な例が、数万行から最大80万行に及ぶC/C++コードのRust移行です。動画デコーダ「libgav1」では、Argonのエージェントが自律的にプロファイリング実験を繰り返し、3万2000行のSIMDコードを安全なRustへ書き換えました。その結果、従来のRust移植版と比べて2.7倍高速化し、最適化されたC++に近い速度を達成しています。
また、データセンターの稼働テレメトリを分析してメモリ配置を最適化し、本番環境で300 TiB以上のメモリを解放。将来的には500 TiBから1 PiBの削減を見込んでいます。量子コンピューティングの研究でも、アルゴリズムのボトルネックを数分で解析し、既存基準を40%改善しました。
防衛限定でセーフティを外して先行提供
提供方法は慎重です。一般ユーザー向けではなく、まずはGoogleのセキュリティ支援枠組み「Fairwind Program」を通じて、審査済みのサイバー防衛担当者向けに先行配布されています。
Argonは脆弱性の発見や検証、パッチ適用を自律して行えるよう訓練されており、信頼できる専門家に対しては、防衛能力を最大限引き出すためにセキュリティガードレールを解除した状態で提供されます。
セキュリティ企業のWizはすでに公共保護イニシアチブでArgonを導入し、世界中の病院で使われている医療ソフトから、過去のモデルが見逃していた重大な脆弱性を発見したと報告しています。
なお、Arenaなどの外部評価でもトップクラスのスコアをつけていますが、Bloombergは社内から「テストの点数は高いが実務ではそこまでではない」という声が出ていると報じ、Googleはこれを否定しています。API価格は導入初期で入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドルに設定されています。
なぜ重要か
Gemini 3.5 Proの計画中止を経て軽量なFlashモデルが続いていたGoogleにとって、Argonは久々に前線へ復帰したことを示す象徴的な一手です。
とりわけ注目すべきは「出力100万トークン」の実装です。これまでのAIは回答が短く制限されていたため、人間が細かく指示を刻んでパーツごとに組み立てる必要がありました。思考と出力のバッファが桁違いに広がったことで、巨大なシステム全体のリアーキテクチャや長大なセキュリティ監査を、モデル自身が途切れることなく完結できるようになります。
開発者や企業にとっては、単なるコード補完ツールから「自律してタスクを片付けるエンジニア」へと役割が変わる分岐点になり得ます。一方で、1回の長大出力にかかるコストや実行時間、途中で前提が崩れた際のリスクは無視できません。
まずは安全防衛という最も検証体制が整った現場で実績を積ませるGoogleのアプローチは手堅いと言えます。今後予定されている一般の有料APIやAI Ultraユーザーへの展開で、この数字通りの実力が証明されるかが次の焦点です。
情報源 (3)
- blog.google(新しいタブで開きます)原文blog.google
- youtube.com(新しいタブで開きます)報道youtube.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com