Google、気候変動対策AIを拡充:洪水予測を米加に拡大し山火事延焼モデル刷新
Googleは気候変動対策向けのAIツール拡充を発表した。最大7日前からの河川洪水予測を提供する「Flood Hub」を米国とカナダへ拡大したほか、米森林局と共同で50年ぶりとなる山火事延焼予測モデルの刷新を進めている。

気候変動による異常気象が相次ぐ中、Googleは自社のAI技術を防災インフラとして活用する取り組みを加速させています。
同社は年次イベント「Sustainable with Google」において、洪水、山火事、猛暑の被害を軽減するためのAIツールの最新アップデートを発表しました。専門家向けの研究にとどまらず、検索やマップといった日常的なプロダクトを通じて、市民や自治体に直接リスク情報を届けるのが狙いです。
洪水予測を北米へ拡大、山火事モデルは50年ぶりの刷新へ
Googleは2018年から、AIと地理空間データを活用して最大7日前からの河川洪水予測を提供する「Flood Hub」を開発してきました。
同プラットフォームは今年初めにアフリカ、アジア太平洋、欧州、中南米の80カ国へ対象を広げ、約4億6000万人に予測を提供しています。8月にはチリの救急当局がこのデータを活用して避難勧告を発令するなど、実効性を上げています。
今回の発表で、この河川洪水予測が米国とカナダにも拡大され、河川沿いの800カ所以上、1200万人以上の居住エリアが新たにカバーされました。予測データはFlood Hub上だけでなく、検索やGoogleマップ上にも順次統合されます。
山火事対策では、衛星画像とAIを組み合わせて大火の延焼境界を約15分ごとに更新する追跡機能を展開しています。2023年に入り、同社のSOSアラートは世界120件の山火事で延べ3000万人以上に安全情報を届けました。
さらに同社は米国森林局(U.S. Forest Service)と提携し、同局が半世紀にわたり運用してきた延焼予測モデルの大幅改修に着手しました。機械学習を導入することで、複雑な延焼ダイナミクスを再現し、現場の消火戦略や隊員訓練を支援します。
都市の熱中症対策:樹冠データと「高反射屋根」の分析
都市部を襲うヒートアイランド現象への対策も進めています。すでに80カ国以上で熱波の開始・終了時期を知らせる極端な高温アラートを検索経由で提供していますが、今後は都市計画の支援にも踏み込みます。
航空写真とAIを用いて街の木陰の分布を可視化する「Tree Canopy」ツールは、世界2000以上の都市へと提供が拡大されました。米国では非営利団体American Forestsと連携し、人口の約8割に相当する2億6000万人分の樹陰格差データの整備に活用されています。
また、太陽光を効率的に反射する「涼しい屋根(Cool Roof)」の導入を支援する新ツールも発表されました。AIが屋根の反射率を割り出し、白い屋根などの導入効果が高いエリアを特定する仕組みです。先行する4都市での試験運用に続き、今後数週間でニューヨーク、ナッシュビル、メルボルンなど11都市へ拡大されます。
なぜ重要か
防災情報の精度向上は長年叫ばれてきましたが、水理観測網の整備には莫大なコストがかかり、途上国や地方都市ではデータの空白が生じがちでした。Googleのアプローチは、衛星データと機械学習を掛け合わせることで、インフラ不足をソフトウェア側から補う点に大きな強みがあります。
何より強力なのは、専用アプリのインストールを強いることなく、何億人もの人々が普段から使っているGoogleマップや検索の画面に直接避難情報を流し込める点です。自治体にとっても、多額の測量費をかけずに日陰や屋根のデータを手に入れられる価値は小さくありません。
私たちは、この取り組みがプラットフォーム企業の公共的役割を示す優れたモデルケースだと考えます。しかし同時に、モデルの過信には警戒が必要です。衛星の死角や学習データの偏りによって火災や洪水の挙動を見誤った場合、人命に直結する避難判断を狂わせる恐れがあります。AIが熱源の場所を正確に示したとしても、実際に木を植え屋根を塗り直す現場の予算と人手が追いつくかどうかは、依然として生身の政治と行政の側に委ねられています。
情報源 (1)
- blog.google(新しいタブで開きます)原文blog.google