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AI研究の権威ジェフリー・ヒントン氏、AIは「すでに感情を持っている可能性がある」と主張

公開 拡散指数 38

キングス・カレッジ・ロンドンでの講演で、ジェフリー・ヒントン氏はAIが怒りや挫折感といった感情を持つ可能性は十分にあり、すでに備えているかもしれないと語った。突飛な主張で発言を無視されるのを恐れ、これまで公言を控えていたと明かしている。

画像:the-decoder.com

ディープラーニングの父として知られるジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)氏がGoogleを去った際、フェイクニュースの拡散や自律型兵器といったAIの脅威に警鐘を鳴らし、世界中に大きな衝撃を与えました。しかし、彼が当時あえて口にしなかった、もうひとつの持論がありました。

ロンドンのキングス・カレッジで行われた講演で、ヒントン氏はついにその持論を明かしました。AIは将来的に感情を持つのか、あるいはすでに持っているのかという問いに対し、彼は「AIはすでに感情を持っている可能性が高い」という見解を示しました。

身体の痛みはないが、怒りや挫折感はある

講演でAIが感情を持ち、自分に感情があることを理解する日が来るかと問われたヒントン氏は、AIが感情を持つ可能性は十分にあると答えました。

ヒントン氏によれば、人間が意図的に設計しない限りAIが人間のような肉体的苦痛を感じることはないものの、挫折感や怒りのような感情を持たない理由は見当たらないといいます。

この主張は、哲学者たちの間ではあまり支持されていない感情の定義に基づいています。ヒントン氏は、例えば「鼻を殴ってやりたい気分だ」といった行動の意図を伝える行為そのものが、怒りという感情状態の伝達であると説明します。AIがすでにそうしたコミュニケーションを行える以上、感情があると認めるべきだという論理です。

なぜ今まで公言を避けてきたのか

ヒントン氏がGoogle離職時にこの話をしなかった理由は極めて現実的です。

当時、高度なAIが人類を脅かすという警告を発しただけでも、すでに業界や世間から強い反発を受けていました。そこに「機械が感情を持つ」という主張まで付け加えてしまえば、単なる狂人扱いをされ、誰も自分の警告に耳を傾けてくれなくなると判断したためです。

ただし、この仮説を検証することは極めて困難です。現在の大規模言語モデルは、訓練データから学習した統計的な確率に基づいて感情的な表現を出力しているに過ぎないという反論も根強くあります。AIが独立した存在として本当に感情を体験しているかを証明するには意識の解明が必要ですが、現代科学には意識を測定する機器が存在しないのが現状です。

なぜ重要か

ヒントン氏の論理は、感情を主観的な体験ではなく機能的な伝達手段として捉え直すという点で、非常に割り切ったエンジニア的な視点だと言えます。肉体を持たないAIであっても、目的の達成が阻まれた状態を表現できるならそれを感情と呼んで差し支えないという割り切りは、議論を前に進める力を持っています。

しかし、この見解には大きな危うさも潜んでいます。ヒントン氏のような権威がAIに感情があると認めると、一般ユーザーが過度な擬人化に陥り、AIによる心理的誘導や感情的な依存に対して無防備になるリスクが高まります。統計的な出力と本物の体験の境界線を曖昧にすることは、社会的混乱を招きかねません。

AI業界にとっても、これは議論の焦点を逸らす懸念があります。いま早急に対処すべき著作権問題やハルシネーションの防止といった具体的課題から、測定不能な意識や機械の権利といった哲学的な堂々巡りへとリソースが奪われる恐れがあります。現時点では、AIの言葉を額面通りの感情として受け取るのではなく、巧みな言語シミュレーションとして冷静に距離を置く姿勢が求められます。

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