米Ford、自動運転子会社「Latitude AI」設立 旧Argo AIから550人を再雇用
Fordは、手放し・視線離脱が可能なレベル3自動運転技術の開発を担う完全子会社「Latitude AI」を設立しました。閉鎖したArgo AIから約550人の技術者を採用し、運転支援機能「BlueCruise」の強化を目指します。収益化が遠い完全自動運転タクシーから、量産車向けの実用的な支援技術へと舵を切ります。

実現の見通しが立たない自動運転タクシーに何十億ドルも注ぎ込むのは、もうやめにする。Fordが出した答えは極めて現実的でした。
Fordは、手放しだけでなく視線も道路から外せるレベル3自動運転技術の開発に特化した完全子会社「Latitude AI」を立ち上げました。
新会社の陣容を固めるのは、昨年Fordが資金拠出を停止して閉鎖に追い込まれた自動運転ベンチャー、Argo AIの元従業員約550人です。
ピッツバーグで旧Argoの精鋭を再集結
Volkswagenとともに支援していたArgo AIの清算は、自動運転業界に大きな衝撃を与えました。しかしFordは、その貴重な技術資産まで手放したわけではありませんでした。
再雇用された約550人のエンジニアは、機械学習、ロボティクス、センサー、地図生成、クラウドシステムなど幅広い領域を網羅しています。彼らに与えられた新たな使命は、実用化の遠い無人タクシーではなく、一般ユーザーが購入する量産車向けの運転支援です。
Latitude AIはArgoの本拠地だったピッツバーグを拠点とし、ミシガン州ディアボーンとカリフォルニア州パロアルトにも開発拠点を設置します。さらにサウスカロライナ州グリーンビルに高速走行テストコースも構えます。
経営陣にはFordのADAS部門を率いるSammy Omari氏がCEOとして就任し、Peter Carr氏がCTO、David Gollob氏が社長として事業運営を担当します。
遠いL4を諦め、量産車のL3で稼ぐ道へ
Latitude AIがまず注力するのは、Fordの既存の運転支援機能「BlueCruise」のアップグレードです。
BlueCruiseは現在、ステアリングから手を離せるものの視線は道路に固定しておく必要があるレベル2にとどまっています。Fordによると、この機能を利用した走行距離はすでに5000万マイルを突破しています。
新会社が目指すのは、その先にある本格的なレベル3です。交通分析企業INRIXによれば、米国のドライバーは年間およそ100時間を渋滞の中で過ごしています。Fordはこの退屈でストレスの多い時間を、車内で別のことに使える自由な時間に変えようとしています。
Argo閉鎖時にFordのジム・ファーリーCEOが語った通り、採算が取れる完全自動運転の実現はまだ何年も先の話です。無人タクシーの普及を待つよりも、数百万台の量産車オーナーから毎月サブスクリプション料金を回収するほうが、はるかに手堅いビジネスになります。
自動運転業界全体が冷え込み、WaymoやCruiseが巨額の赤字や組織再編に直面する中、Mercedes-BenzやVolvo、GMなども量産車でのハンズフリー走行に注力しており、競争の主戦場は完全に移りつつあります。
なぜ重要か
Fordの今回の判断は、夢のような理想論から収益重視の現実路線への見事な方向転換と言えます。
一般ユーザーにとってのメリットは明確です。いつ来るかわからない自動運転タクシーを待つのではなく、今後数年のうちに登場するFord車で、毎日の通勤渋滞中にスマホを見たり仕事の確認をしたりできるようになる可能性があります。
業界全体にとっても、自動車大手がL4の基礎開発に際限なく資金を投じる時代が終わったことを象徴しています。これからの勝負は、量産車で安全に機能を提供し、ソフトウェア課金でいかに継続的な利益を生み出せるかにかかっています。
Argoという巨大組織の重荷を切り離しつつ、約550人という優秀な部隊を自社直属の部隊として再編成し、L3に集中させたFordの手法は非常にスマートに見えます。
ただし、レベル3の実用化には事故時の責任の所在や、緊急時にドライバーへ運転操作を引き継ぐ際の安全確保など、依然として高いハードルが残されています。先行するMercedes-Benzのように責任リスクを背負う覚悟を持てるかどうか、新チームの真価が問われます。
情報源 (3)
- media.ford.com(新しいタブで開きます)原文media.ford.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com
- iotevolutionworld.com(新しいタブで開きます)報道iotevolutionworld.com