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研究

ヒト脳組織を使う生体コンピュータ「Neuroplatform」登場、月額500ドルでレンタル提供

公開 拡散指数 36

報道によると、スイスのFinalSparkはヒト脳オルガノイドを利用した生体計算プラットフォーム「Neuroplatform」の遠隔レンタルを月額500ドルで開始した。電極刺激とドーパミンで神経回路を学習させ、従来のAI学習に比べ消費電力を10万分の1に抑えることを目指す。すでに30校以上の大学が利用を申請している。

ヒト脳組織を使う生体コンピュータ「Neuroplatform」登場、月額500ドルでレンタル提供
画像:livescience.com

最先端の生成AIを動かすために必要な電力は、いまや膨大な量に達しています。1950年代から続くシリコン半導体の進化がエネルギーの壁に突き当たるなか、スイスのスタートアップが全く別の解決策を打ち出しました。本物のヒト脳細胞を使ったバイオコンピュータです。

スイス企業のFinalSparkは、培養されたヒトの脳オルガノイドで稼働する「Neuroplatform」のクラウド提供を開始しました。月額500ドルで、研究者はインターネット経由でこの生体コンピュータを利用できます。共同創業者のフレッド・ジョーダン氏によると、脳オルガノイドによる計算リソースを一般向けに月額貸し出しする試みは世界初だといいます。

ドーパミンで学習する0.5ミリの脳オルガノイド

計算ユニットには、直径わずか0.5ミリメートルの球状脳オルガノイドが4個配置されています。各オルガノイドには8本の電極が接続され、神経細胞に電気刺激を与えると同時に、その反応を従来のコンピュータネットワークへ送受信します。

学習の仕組みは人間の脳そのものです。望ましい接続変化が起きた際には快楽物質であるドーパミンを与えて正の強化を行い、電気パルスを組み合わせることで神経回路の形成を促します。ジョーダン氏らは、この技術が確立されれば、最新AIのトレーニングに必要な電力を従来の10万分の1に削減できると試算しています。

オルガノイドの挙動はウェブ上で24時間ライブ配信されており、誰でも観察可能です。最大の課題は寿命で、初期の実験では数時間しか持ちませんでしたが、現在の平均寿命は約100日まで延びました。同社の施設には常時2000個から3000個のオルガノイドが維持されています。

菌類か、細菌か、それともヒト細胞か

すでにミシガン大学やベルリン自由大学など9つの研究機関がこの生体コンピュータの利用を開始しており、34の大学が利用を申請しています。ミシガン大学はオルガノイド特有の命令体系、いわば生体プログラミング言語の構築に取り組んでいます。

一方で、バイオコンピューティングのアプローチはヒトの脳細胞だけではありません。スペイン国立バイオテクノロジーセンターは細菌を用いた環境計測コンピュータを研究しており、過酷な湖水環境などでシリコン半導体を凌駕する「細胞覇権」を目指しています。

また英西イングランド大学のアンドリュー・アダマツキー教授は、キノコなどの菌糸ネットワークを用いた計算を提唱しています。菌糸は倫理的な懸念がなく、培養も容易で環境耐性に優れているため、脳オルガノイドよりも実用化のハードルが低いと主張します。培養脳が将来的に意識を持つのではないかという倫理的議論に対し、FinalSparkは哲学者らを招いて対応を進めています。

なぜ重要か

AIブームによるデータセンターの電力消費爆発に対し、生体組織のエネルギー効率を活用する試みは極めて興味深いアプローチです。月額500ドルという価格設定により、自前で高価なバイオラボを持たない研究室でも、API経由でウェットウェア計算の実験に着手できるようになりました。

私たちは、FinalSparkが難解な合成生物学をクラウド型サブスクリプションとして提供した点を高く評価しています。世界中の大学に計算リソースを開放することで、神経細胞を制御するためのプログラミング手法がオープンに集積されていくからです。

一方で、約100日でハードウェアが寿命を迎えるという根本的な制約は残ります。生体組織である以上、個体差をゼロにすることは難しく、シリコンチップのような厳密な再現性と信頼性を担保できるかは依然として不透明です。

すぐに既存のGPUを置き換える存在にはなり得ませんが、省エネ計算の極限を探る学術的ブレークスルーとして、今後の検証を見守る価値は十分にあります。

情報源 (1)

  1. [1]
    livescience.com(新しいタブで開きます)原文livescience.com

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