元Metaのタンパク質研究チーム、AI創薬スタートアップ「EvolutionaryScale」で4000万ドル調達
フォーブス報道によると、元Metaのタンパク質折り畳み研究チームが新会社EvolutionaryScaleを立ち上げ、約4000万ドルのシード資金を調達した。Meta在籍時に7億件の構造を予測したモデル開発経験を生かし、創薬支援に向けた生物学向け大規模AIモデルの拡大を進める。

大手テック企業が生成AIチャットボットの収益化に躍起になる中、基礎科学の最前線にいたAIバイオ研究チームがMetaを去ることになりました。
今年4月にMetaがタンパク質構造予測プロジェクトを閉鎖したのを受け、同チームを率いていたAlexander Rives氏と8人の初期メンバーは、新会社EvolutionaryScaleを立ち上げました。Forbesによると、同社はLux Capitalが主導するシードラウンドで少なくとも4000万ドルを調達したとのことです。著名投資家のNat Friedman氏とDaniel Gross氏も参加し、評価額は約2億ドルに達したと報じられています。
言語モデルの技術で7億個のタンパク質を解明する
タンパク質はアミノ酸がつながって折りたたまれた分子で、その立体構造によって生体内での働きが決まります。構造を解明することは、新薬が正しく標的に結合するかを突き止めるための重要な鍵です。
この分野では2020年にGoogle傘下のDeepMindがAlphaFoldを公開し、2億個の構造を予測して大きな話題を呼びました。一方でRives氏らのチームは、GPT-4などのTransformerアーキテクチャを生物分子データに適用し、タンパク質を一種の「言語」として学習させるアプローチを取りました。
昨年11月にScience誌で発表された論文によると、同チームのモデルはAlphaFoldに比べて平均精度ではわずかに劣るものの、予測速度は約60倍に達します。この高速処理を活かして7億個の未知の立体構造データベースを構築し、創薬や環境汚染物質を分解する微生物の開発を目指しています。今回の資金調達も、このバイオAIモデルをさらに大規模化するためのものです。
プラットフォーム企業の撤退と投資マネーの流入
ChatGPTの流行以降、Metaは社内のAI資源をチャットボットなどの短期的な商用製品へと集中させています。かつてOpenAIが2021年にロボット研究部門を解散したのと同様に、短期間で直接的なリターンを生みにくいバイオ部門が整理の対象となりました。
バイオAIの商業化は決して容易ではありません。従来の分子モデリングツールを提供するSchrödinger社ですら時価総額は30億ドルを下回っており、従来の製薬企業の間でもAIによる劇的なブレイクスルーに対して慎重な見方が根強く残っています。
それでも投資家たちは、InflectionやCohere、Adeptなどの基盤モデル企業と同様に、生物学におけるスケール則の可能性に巨額の資金を投じる道を選びました。
なぜ重要か
製薬研究者やバイオテクノロジーの現場にとって、従来の数十倍の速度で構造を探索できるモデルは非常に魅力的です。初期のスクリーニング段階で候補分子を大幅に絞り込めるため、実用化されれば新薬開発のサイクルを大幅に短縮できる可能性があります。
一方で、テキスト生成AIと異なり、生物学の世界では「ハルシネーション」の代償が極めて大きいというリスクもあります。速度がどれほど速くても、最終的には実験室での検証が必要であり、わずかな予測のズレが巨額の治験失敗につながるシビアな領域です。
Metaの撤退は短期的な財務規律を優先した現実的な判断に見えますが、基礎科学を変革しうる重要技術を手放したとも言えます。大手テックが目先の収益に追われる結果、生命科学の未来を切り拓く挑戦が再びスタートアップとVCの手に委ねられた形です。
情報源 (2)
- forbes.com(新しいタブで開きます)原文forbes.com
- forbes.com(新しいタブで開きます)報道forbes.com