中国Engine AI、ヒト型ロボット「PM01」の宇宙飛行士計画を発表
Engine AIは民間宇宙企業のInterstellorと提携し、ヒト型ロボット「PM01」を宇宙へ派遣する計画を発表した。船外活動などの危険な作業をロボットに代替させて宇宙飛行士の安全を確保する狙いだ。過酷な真空や放射線環境への適応が今後の課題となる。
人型ロボットを宇宙に送り込むという構想が、中国で現実のプロジェクトとして動き始めました。
深センに拠点を置くロボット開発企業のEngine AIは、民間宇宙企業のInterstellorと提携し、「人型ロボット宇宙飛行士探査プログラム」を開始すると発表しました。同社のヒューマノイドロボット「PM01」を軌道上へ打ち上げ、世界初のロボット宇宙飛行士を目指す計画です。
Engine AIは昨年、PM01が世界で初めて前方宙返りに成功した人型ロボットであると発表して話題を集めました。今回はアクロバティックな動きから一転して、過酷な宇宙空間への挑戦となります。
地上から極限の宇宙環境へ
宇宙空間での作業は、実験室や工場での稼働とは比較にならないほど過酷です。
真空、微小重力、急激な温度変化、そして強烈な宇宙放射線にさらされるため、ロボットシステムには極めて高い信頼性と自律判断能力が求められます。
今回の共同開発では、PM01の耐環境性能とミッション遂行能力の強化に焦点を当てます。最終的な目標は、宇宙ステーションの船外修理や危険区域の点検、長期間のモニタリング作業をロボットに単独でこなさせることです。生身の宇宙飛行士を危険な船外作業から解放し、乗組員のリスクを大幅に減らす狙いがあります。
40kgの軽量ボディに詰め込まれたハードウェア
宇宙を目指すロボットですが、PM01のサイズ感は意外なほどコンパクトです。
Engine AIのフルサイズ旗艦モデル「SE01」と比較すると、PM01は身長1.38メートル、体重約40キログラムと、27センチ低く8キロ軽くなっています。アルミニウム合金製のエクソスケルトンを採用し、腰部分は最大320度まで回転できる柔軟性を備えています。
頭脳とセンサー部には、空間認識のためのIntel RealSenseデプスカメラを搭載。計算処理にはNVIDIA Jetson OrinモジュールとIntel N97 CPUを組み合わせたデュアルチップ構成を採用し、リアルタイムの運動制御と画像認識をこなします。
なお、Engine AIは昨年6月、京東(JD.com)上で約2万7000ドルのオープン型モデル「PM01 JD Joy Inside」を発売しており、研究者向けプラットフォームとしての実績もあります。
提携先のInterstellorも独自の宇宙旅行ロードマップを掲げています。同社は1月22日に、2028年にも準軌道宇宙船「CYZ1」で高度100キロへの体験飛行を開始し、2032年頃には「CYZ2」で高度400キロの軌道宇宙旅行を実現する計画を発表しています。
なぜ重要か
これまで人型ロボットといえば、宙返りを披露するか、倉庫で荷物を運ぶデモが定番でした。しかし地上の製造現場では専用機械のほうが効率的な場面も多く、人型である必然性が常に問われてきました。
その点、宇宙船外活動は人型ロボットの利点が最も活きる領域と言えます。宇宙ステーションのハッチや手すり、工具類はすべて人間の体躯に合わせて作られているため、専用ロボットアームよりも人間と同じ構造を持つロボットのほうが既存設備にそのまま適合しやすいからです。
Engine AIのアプローチは、具身知能(Embodied AI)の実証実験として非常に筋が良いと見られます。極限環境に耐えうる耐久性を追求するプロセス自体が、地上向け製品の堅牢性向上にも直結するはずです。
ただし、民生用コンポーネントを宇宙仕様に引き上げるハードルは決して低くありません。Jetson Orinなどの汎用プロセッサが宇宙放射線にどこまで耐えられるか、真空下での放熱をどう処理するかなど、クリアすべき技術的課題は山積みです。実際のフライト目標が2028年以降であることからも、実現までには粘り強い検証作業が求められそうです。
情報源 (1)
- interestingengineering.com(新しいタブで開きます)原文interestingengineering.com