ElevenLabs、グラミー受賞者らと共同制作したAIアルバムを公開 Eleven Musicを活用
ElevenLabs はグラミー賞受賞アーティストらと共同制作した音楽アルバム「The Eleven Album」を発表した。新モデル「Eleven Music」を用いて制作され、参加アーティストが楽曲の全著作権と配信印税を保持する。対立が続いていた音楽業界において、権利許诺と共創を両立させる新たな基準を示す動きだ。

わずか1年前、音楽業界における生成AIといえば、著作権侵害の訴訟や配信停止要請、アーティストによる猛反発の代名詞でした。
しかし今、かつて対立していた大物アーティストたち自身が、AIモデルを使った本格的なスタジオアルバムを発表し始めています。
ElevenLabs は新作音楽アルバム「The Eleven Album」をリリースしました。同社の最新音楽生成モデル「Eleven Music」を活用した作品で、グラミー賞やアカデミー賞など主要エンタメ賞を総なめにしたレジェンドのエミー・グラミー・オスカー・トニー賞受賞者ライザ・ミネリや、グラミー賞8冠のアート・ガーファンクル、ブリトニー・スピアーズらのヒット曲を手がけたパトリック・パトリキオスら豪華な顔ぶれが参加しています。
最も注目すべきは、参加した全アーティストが楽曲の完全な著作権と配信印税の全額を保持している点です。
一流プロがAIで行った制作プロセス
今回の取り組みは、単にAIにプロンプトを入力して完成品を眺めるようなものではありません。
ベースとなった Eleven Music は、シンプルな指示文からフル尺の楽曲を生成できるだけでなく、歌詞やテンポ、楽器構成を細かく調整できる編集機能を備えています。さらに、本格的なミックス作業に欠かせないスタジオ品質のステムデータを最大6トラックまで書き出すことが可能です。
一部の楽曲はAIによる伴奏に本人が歌を乗せ、別の曲では ElevenLabs のライセンス許諾型マーケットプレイスを通じて本人の同意のもと複製されたAI音声が使われました。
アーティストが自らの声や音楽的スタイルを正当にライセンス提供し、収益化するエコシステムが形になりつつあります。
法廷闘争から正規ライセンス提携へ
このアルバムの登場は、音楽業界全体の劇的な方針転換を象徴しています。
かつてはユニバーサル、ワーナー、ソニーといった大手レコード会社が一斉にAIスタートアップを提訴していました。しかし昨年、これら3大メジャーレーベルはいずれもAI企業との提携へと舵を切りました。
ElevenLabs も権利者団体である Kobalt Music や Merlin と協力関係を結び、権利保護とAI技術が共存する枠組み作りを進めています。著名アーティストが率先してツールとして使いこなす姿を見せたことで、AI排斥の動きは急速に勢いを失いつつあります。
なぜ重要か
ElevenLabs の戦略は極めて巧妙かつ現実的だと考えられます。
従来のAI音楽サービスは既存の業界秩序を壊そうとして法的な壁に激突してきました。それに対し ElevenLabs は、著作権と配信収益をアーティスト側にすべて渡すことで、音楽業界最大の懸念を真正面から解消してみせました。
一般のクリエイターにとっても、最大6本のステム書き出しや細かなパート調整ができるツールの登場は大きな意味を持ちます。高額なスタジオ設備がなくても、商業レベルのデモ音源やアイデア出しを瞬時に行える環境が整ったと言えます。
ただし課題もあります。大御所アーティストには有利な条件が提示される一方で、無名のインディペンデント作家が同様の交渉力を持てるかは不透明です。また、高品質な楽曲生成が容易になることで、配信プラットフォームがAI生成楽曲で飽和する懸念も残ります。それでも、AIが音楽制作の現場に定着したことは間違いありません。
情報源 (1)
- elevenlabs.io(新しいタブで開きます)原文elevenlabs.io