EA、AIで11,000人の実在大学アメフト選手を3Dアバター化
EA Sportsが新作ゲーム『College Football 25』において、独自AIで11,000人の大学アメフト選手の顔写真から3Dアバターを生成したことが報じられた。全身スキャンのコストを抑えつつ大量の選手を再現しており、今後のスポーツゲーム制作を効率化する試みとなる。

1万1000人もの実在アスリートを3Dモデル化してゲームに登場させるのは、従来の開発手法では天文学的なコストと時間がかかる難題でした。
「Madden NFL」のようなプロスポーツ作品では、スタジオに選手を呼んで全身3Dスキャンを行うのが標準的です。しかし、米大学体育協会(NCAA)ディビジョン1のアスリート数はNFLの約6倍に上ります。全員を手作業でスキャンするのは、物理的にも予算的にも不可能でした。
米EA Sportsは、11年ぶりのシリーズ復活となる「College Football 25」において、自社開発のAIツールを活用し、大学から提供された顔写真から1万1000人分の3Dアバターを一挙に生成しました。米ウォール・ストリート・ジャーナルが最初に報じ、米TechRadarなどが詳細を伝えています。
全身スキャンを廃止、顔写真から3D選手を自動生成
EAが取った手法は、大学が保有する公式ヘッドショット(顔写真)をAIモデルに入力し、ゲーム内で動かせる3Dアバターへ変換するというものです。
最初から完璧なモデルが出力されたわけではありませんでした。EAの開発チームは、望ましい品質が得られるまで入力画像やデータを微調整し続け、その試行錯誤を通じてAI側に同社が求める基準を学習させました。
完成したアバターは、精密なスキャンを経たMaddenのトップ選手ほど微細ではありません。それでも、従来の大学フットボール作品で使われていた汎用のテンプレート顔とは比較にならないほど個人の特徴を捉えています。
一度構築したAIモデルと選手データは、今後の年次アップデートでさらに効率よく活用できます。EAはこのノウハウを、アイスホッケーやレースゲームなど他のスポーツタイトルにも水平展開していく見通しです。
11年の休止を経て実現した「600ドル+豪華版」の肖像権契約
このシリーズは、選手の肖像権をめぐる集団訴訟を受け、2013年に開発中止へ追い込まれた過去があります。NCAAの規則改定を受け、EAは2021年に正式復活を予告していました。
今回は法的リスクを完全にクリアするため、選手の事前同意を取り付けた上でライセンス料を支払っています。参加した各選手には、最低600ドルの現金とゲームのデラックス版が提供されました。さらに注目度の高いスター選手には、パッケージを飾ったりSNSで宣伝したりする見返りとして、より高額な報酬が支払われています。
なぜ重要か
今回の取り組みは、スポーツゲームにおける「没入感の本質」を突き詰めた非常にスマートなアプローチだと評価できます。
ユーザーにとって重要なのは、毛穴が見えるほどの超リアルな質感よりも、「自分の大学で活躍する憧れの選手が本名と本人の顔で動いている」という事実そのものです。多少のディテールを犠牲にしてでも、AIで1万1000人という圧倒的なスケールを網羅したことは、プレイヤーの体験価値を大きく引き上げました。
業界全体にとっても、生成AIの現実的な活用例として大きな意味を持ちます。ゲーム全体をAIに丸投げするのではなく、スキャンが不可能な大規模アセットの量産パイプラインにAIを組み込む手法は、オープンワールドゲームのNPC制作などにも波及するはずです。
一方で懸念もあります。今回はシリーズ復活のお祝いムードもあり、選手側は600ドルという比較的安価な対価で納得していますが、作品がメガヒットを記録した場合、AI生成アバターに対する肖像権の再交渉を求める声が強まる可能性は否定できません。
情報源 (1)
- techradar.com(新しいタブで開きます)原文techradar.com