Disney、映像の感情に合わせて広告を配信するAIツール「Magic Words」をテスト中
報道によると、Disneyは動画内のシーンや感情を分析して最適な広告を配信するAIツール「Magic Words」のテストを開始しました。Disney+やHulu向けにグローバル広告企業6社と共同で検証を進めており、従来の属性ターゲティングから感情ベースの文脈広告への移行を狙います。

感動的な映画のクライマックスで涙を流した直後、大音量で陽気な洗剤のCMが流れて現実に引き戻される。誰もが一度は経験したことのある興ざめな瞬間を、AIでなくそうとする動きが始まりました。
ロイター通信は2月9日、ディズニーが「Magic Words(魔法の言葉)」と呼ばれる新しいAI広告ツールをテストしていると報じました。劇中のシーンの感情や雰囲気に合わせて、流すCMを自動でマッチングさせる仕組みです。
映像の感情やムードをAIでタグ付け
このツールは、人工知能と機械学習を活用して、ディズニーが抱える膨大な映画やドラマのライブラリをシーンごとに分析します。映像内の物体やブランドだけでなく、その場のムードや感情までタグ付けするのが特徴です。
このデータはメタデータとして蓄積され、Disney+ や Hulu 上で展開されます。広告主は年齢や性別といった大雑把な属性情報ではなく、シーンの感情に合わせて広告を配信できるようになります。
ディズニーはすでに大手広告代理店6社と提携し、このコンテキスト広告機能のベータテストを開始しています。
従来のテレビ広告の落ち込みを補う一手
ディズニーが配信向け広告技術の刷新を急ぐ背景には、従来のテレビ離れがあります。2024年度第1四半期の決算では、従来型テレビの視聴率低下が響き、広告収入全体が約3%減少しました。
一方で、広告付きの配信プランは絶好調です。Disney+ の広告付きプランは第1四半期だけで1,000社以上の広告主を集め、提供開始時と比べて10倍の規模に急拡大しています。
ディズニーには、2008年から広告付きモデルを展開してきた Hulu で培った長年のノウハウがあります。ライバルのアマゾンも、北米の Prime Video に広告を導入し、非表示にするには月額3ドルを上乗せさせる形で、動画広告から年間50億ドル近くを稼ぎ出そうとしています。
なぜ重要か
視聴者にとって、動画配信サービスでの広告表示は避けられない現実になりつつあります。消せない広告であれば、物語の余韻をぶち壊す不快なCMよりも、場面の雰囲気に沿ったCMが流れる方がストレスは確実に少なくなります。
広告主にとっても、アプローチの前提が変わります。ターゲット層を年齢や性別だけで輪切りにするのではなく、視聴者が感動している瞬間や前向きになっている瞬間に自社ブランドを届ける方が、はるかに高い訴求効果が期待できます。
私たちは、ディズニーのこの戦略は極めて巧妙だと考えます。世界屈指の感情を揺さぶるコンテンツ群を保有しているからこそ、その感情体験そのものをプレミアムな広告枠としてマネタイズできるからです。
ただし懸念もあります。アルゴリズムの調整を誤り、悲劇的な別れの直後に不謹慎な商品が提示されれば、視聴者は広告だけでなく作品自体に嫌悪感を抱きかねません。物語の尊厳を守りながら広告効果を最大化できるかどうかが問われます。
情報源 (1)
- pymnts.com(新しいタブで開きます)原文pymnts.com