Deezer、他社プレイリスト対応のAI音楽検出ツールを公開:SpotifyやApple Musicも走査
Deezerは、SpotifyやApple Musicなど20の競合ストリーミングサービス上のプレイリストをスキャンし、生成AI楽曲を検出する無料ツールを公開した。技術ライセンスの提供先が見つからなかったため、一般ユーザー向けに直接開放した形だ。

自分のプレイリストに紛れ込んだ無機質な楽曲に違和感を覚えているなら、その正体を暴いてくれるツールが登場しました。
音楽配信サービスのDeezerは6月11日、プレイリスト内のAI生成楽曲を検出できる無料のオンラインツールを公開しました。驚くべきは、自社サービスだけでなく、SpotifyやApple Music、SoundCloud、YouTube Musicなど、競合を含む主要20プラットフォームの楽曲を横断してスキャンできる点です。
ライバルが買わないなら、ユーザーに直接配る
ツールの使い方はシンプルです。専用サイトにアクセスして普段使っている配信サービスを選び、アカウント連携を承認するだけです。Deezerがプレイリストを読み込み(移行機能で使われているTune My Musicの仕組みを流用している模様です)、AIが生成した楽曲が含まれていないかを自動で判定します。検出された場合はアラートが表示され、その結果をSNSなどでシェアすることも可能です。ツールは27言語に対応しています。
この大胆な動きの背景には、プラットフォーム間の思惑の違いがあります。Deezerは以前からAI楽曲の検出に最も積極的で、公式プレイリストやおすすめ機能からAI楽曲を排除してきました。さらに自社の検出エンジンを他社へライセンス提供しようと持ちかけましたが、買い手は現れませんでした。Qobuzは独自の仕組みを開発し、SpotifyやApple Musicはアーティスト側の自主申告によるタグ付け方針を選んだためです。
DeezerのCEOであるAlexis Lanternier氏は、業界が追随しないのなら、リスナー自身が真実を確かめられるように大衆へ直接届けることにした、とコメントしています。
毎日7万曲超が流入、大半は再生数稼ぎの不正
Deezerが公表した数字は、配信現場の過酷さを浮き彫りにしています。同サービスに新しくアップロードされる楽曲のうち、実に44%がAIによって作られたものです。
数にすると毎日およそ7万5000曲、月間では200万曲を超えるAI楽曲が押し寄せています。しかし皮肉なことに、一般ユーザーがそれらを聴いているわけではありません。AI楽曲の再生数は全体のわずか1〜3%にとどまり、しかもその再生の約85%は不正な再生水増し行為と判定され、収益分配から除外されています。
つまり、大量のAI楽曲は音楽表現ではなく、ロイヤルティ詐欺を狙ったスパムと化しているのが実情です。Deezerは、今年初めにAI音楽を全面的に禁止したBandcampに続き、配信規約の改定やAIコンテンツの完全排除も検討していると明かしています。
なぜ重要か
リスナー目線では、自分が聴いている音楽の純度を確かめる手軽な手段になります。認証を通すだけで他社サービスのプレイリストを無料で診断できるため、作業用BGMなどにAI曲が混ざっていないか気になるなら試す価値は十分にあります。
業界全体から見れば、Deezerのこの戦術は非常にしたたかです。自主申告頼みで対応が後手に回っているSpotifyやApple Musicに対し、外部からリスナーを巻き込んで「ライバルの棚卸し」を迫る形を作りました。ユーザーが競合アプリ内でAIスパムを発見すれば、批判の矛先は当然そのプラットフォームに向かいます。
もちろん、検出精度には常に誤判定のリスクがつきまといます。実験的なアプローチをとる生身のアーティストをAIと決めつけてしまえば炎上しかねません。それでも、水面下のデータ詐欺問題をリスナーの目の前に可視化させたインパクトは小さくありません。
情報源 (2)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com