英コリンズ英語辞典、2023年の「今年の言葉」に「AI」を選出
英コリンズ英語辞典は2023年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」に「AI」を選出したと発表した。使用頻度がこの1年で4倍に急増し、メールや配信サービスのように日常へ急速に定着したことが選出の決め手となった。

一昨年はNFTがもてはやされ、昨年は絶え間ない政治・経済の混乱を表す「パーマクライシス」(permacrisis)が選ばれました。そして2023年、世の中の話題を完全に支配したのは間違いなくこの2文字でした。
英コリンズ英語辞典は、2023年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」(今年の言葉)に「AI」(人工知能)を選出したと発表しました。発行元によると、この言葉の使用頻度は過去1年で4倍に急増したといいます。
近未来の技術から日常の道具へ
コリンズはAIを「コンピュータプログラムによる人間の精神的機能のモデリング」と定義しています。厳密には頭文字を取った略語ですが、他の候補を圧倒するほどの勢いを見せました。
コリンズのマネージングディレクターであるアレックス・ビークロフト氏は、AIが議論の余地なく2023年の最大の話題だったと語っています。かつては未来的と見なされていた技術が、電子メールや動画ストリーミングと同じように、あっという間に人々の生活に溶け込んだと指摘しました。
BBCがChatGPTにコメントを求めたところ、アルゴリズムとデータの力によって進化する世界において、AIの深い影響力を反映した結果だという、AIらしい優等生な回答が返ってきました。
現実社会でも実例には事欠きません。ビートルズはAI技術を使って古いカセットテープからジョン・レノンの歌声を抽出し、最後の新曲を完成させました。一方で、英歌手クリフ・リチャード卿のように、BBCの取材でAIを人工授精(artificial insemination)と言い間違えて拒絶反応を示すベテランもいました。
発表のタイミングも象徴的です。英国のスナク首相は、世界各国の首脳やIT大手幹部、研究者ら約100人を集め、AI安全サミットを開催したばかりです。
減量薬やインフレ関連語も候補に
今年の最終候補リストには、現代社会の関心や不安を映し出す言葉が並びました。
健康分野では、食欲抑制作用を持つ薬「セマグルチド」(Semaglutide)の使用頻度が3倍に増えてリスト入りし、「超加工食品」(Ultraprocessed)も並びました。
経済苦境を反映した言葉としては、物価高を口実に企業が不当に利益を上乗せする「強欲インフレ」(Greedflation)や、銀行口座を強制解約される「ディバンキング」(Debanking)が挙げられています。
このほか、映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』から広まった個人の人格形成に欠かせない出来事を指す「カノン・イベント」(Canon event)や、有名人の二世を揶揄する「ネポ・ベイビー」(Nepo baby)、SNSで無駄な消費を戒める「脱インフルエンス」(Deinfluencing)なども注目を集めました。
なぜ重要か
コリンズがAIを選んだことは、意外性こそないものの、極めて順当で正確な判断だと考えます。
2年前に選ばれたNFTは投機熱の終息とともに急速に存在感を失いましたが、AIの浸透速度と実用性は全くの別物です。専門知識のない一般ユーザーであっても、メールの下書き、コードの修正、画像の編集といった日々の作業に当たり前のように活用し始めています。
ただし、この急速なバズワード化には危うさもあります。単なるルールベースの自動化プログラムにまでAIの看板を掛け替える過剰なマーケティングが横行しているのが現状です。
政府や規制当局が破滅的リスクへの警戒を強める一方で、現場の利用者は著作権問題や雇用への不安に直面しています。AIが日常語として定着した2023年は、技術の実験フェーズが終わり、現実の社会課題や利害調整と本格的に向き合う時代の始まりを告げています。
情報源 (2)
- bbc.com(新しいタブで開きます)原文bbc.com
- theguardian.com(新しいタブで開きます)報道theguardian.com