Cognitionが「SWE-1.7」公開:Kimi K2.7基盤でGPT-5.5級、Devinで即日提供
Cognitionは自社エージェントDevin向けの新モデル「SWE-1.7」を発表した。オープンソースのKimi K2.7をベースに強化学習を重ね、GPT-5.5やClaude Opusに迫るコード生成力を格安コストで実現。Cerebrasを活用し、毎秒1000トークンの高速推論で即日利用可能となった。

AIコーディングエージェントの多くは、巨大な商用クローズドモデルに依存し、高い推論コストとレイテンシに頭を悩ませてきました。
Devinを手がけるCognitionは7月8日、自社開発のソフトウェアエンジニアリングモデル「SWE-1.7」を発表しました。中国のオープンソースモデル「Kimi K2.7」をベースに独自の強化学習パイプラインを構築し、GPT-5.5やOpus級の知能をはるかに低いコストで実現したとしています。DevinのWeb、デスクトップ、CLIで即日提供が始まっており、Cerebrasのハードウェア上で毎秒1000トークンという高速推論で動作します。
ベンチマークのFrontierCode 1.1において、SWE-1.7はベースモデルの30.1%から42.3%へと急伸し、GPT-5.5の43.0%に迫る数値を記録しました。Terminal-Bench 2.1でも81.5%、SWE-Bench Multilingualでは77.8%に達し、旧世代のSWE-1.6を圧倒しています。
「強化学習の上限」を打ち破った工夫
業界ではこれまで、一度強力な強化学習が施されたオープンモデルに対し、追加の強化学習を行っても性能向上の壁に直面すると考えられていました。
Cognitionはこの「ポストトレーニングの限界」に挑みました。同社は非同期強化学習におけるエントロピー崩壊と推論・学習間の乖離を防ぐため、サンプリング分布のリプレイ手法を導入。top-pサンプリングで得られる有用な勾配情報のみに絞り込むことで、長期の学習でも挙動を安定させました。さらにMuonオプティマイザの採用や非決定論的演算の排除も寄与しています。
また、長い文脈を要するタスク向けに「自己圧縮」機能を実装しました。作業状態を自ら要約して処理を再開できるため、生のコンテキストウィンドウを超えた長時間の自律作業が可能になっています。
3大陸に分散したクラスタで1兆パラメータを回す
数万基規模の単一巨大GPUクラスタを確保するのはスタートアップにとって困難です。そこで同社は、強化学習の「学習側だけが高帯域を必要とし、ロールアウトの推論側はどこにあっても動く」という特性に着目しました。
自社GPUに加えFireworksなどの推論プロバイダを組み合わせ、3大陸・4箇所のデータセンターを連携。更新時には圧縮した重みの差分のみをオブジェクトストレージ経由で送信し、データ転送量を99%以上削減しました。
1兆パラメータ規模のモデルでありながら、大陸をまたぐ同期はわずか1〜2分で完了し、推論の停止時間は3〜4秒に抑えられています。ノード障害時もNVIDIA Dynamoを活用してセッションを別ワーカーへ自動再ルーティングする耐障害性を備えています。
なぜ重要か
Devinを利用するエンジニアにとって、Cerebrasによる毎秒1000トークンの応答速度と長時間の自律タスク安定化は、開発効率を直接引き上げるメリットになります。複雑なリファクタリングや環境構築などを任せる用途なら、今すぐ試す価値があります。
業界全体にとっても、何億ドルも投じてゼロから事前学習を行わなくても、Kimi K2.7のような優れたオープンソース基盤を土台に独自の強化学習技術とインフラを磨けば、フロンティア級の商用モデルと対等に戦えることを証明した意味は大きいです。
巨大な単一クラスタを持たない制約を、分散推論と差分更新のアーキテクチャで回避した点は極めて巧妙に見えます。一方で、オープンモデルの基盤に強く依存する構造であるため、基底モデルの設計思想が変わった際に独自の学習パイプラインをどこまで迅速に適応し続けられるかが今後の課題と言えそうです。
情報源 (1)
- cognition.com(新しいタブで開きます)原文cognition.com