カードゲーム開発、AI絵師に9万ドル支払い 月10時間稼働で千枚超
デジタルTCG『Champions of Otherworldly Magic』の開発元は、カードイラスト制作を担うAIクリエイターに計9万ドルを支払ったと明かした。月10時間の作業で月額1万5000ドルを受け取り、半年で1000枚以上を生成・加筆修正したという。従来の絵師チームより圧倒的に速く低コストだと主張している。

ゲーム開発でAIイラストを使うと、指の破綻や既視感を理由に批判されるのがこれまでの通例でした。しかし、あるカードゲーム開発元は批判を気にするどころか、AIアーティストを雇って浮いたコストと圧倒的なスピードを公に誇示しています。
デジタルTCG「Champions of Otherworldly Magic」の公式Xアカウントは、自社のカードアートを制作する匿名の「AIアーティスト」に対し、月額1万5000ドルを支払っていると明かしました。驚くべきは、その労働時間が月にわずか10時間足らずという点です。
時給に換算すると実に1500ドル。開発元はこれまでに計9万ドルをこのアーティスト1人に支払っています。
わずか10時間の作業で1000枚以上を生成
公式アカウントの投稿によると、この担当者はわずか10時間で何百枚ものアートを制作し、従来のアーティストチームとは比較にならない圧倒的な速度を誇ると主張しています。追加の指といった破綻もなく、キャラクターの進化や別スキン、異なるアートスタイルも一貫していると胸を張ります。
共同創業者兼CEOのMiles Malec氏がPC Gamerに語ったところによると、このアーティストは過去6か月間で1000枚以上の画像を生成しました。なお、まったくの素人ではなく、15年のデジタルアート経験を持つプロで、SNSも利用していないといいます。
投稿では「100パーセントAI生成」とアピールされていましたが、Malec氏によると実際は手作業によるレタッチが含まれています。大半の初動作業はAIが担うものの、指の崩れやエラーを排除するために手動の編集とフィルター処理が不可欠だとしています。
同ゲームはこれまでカード販売で約50万ドルを売り上げています。カード自体は暗号資産で取引できるNFTですが、売上の大半はクレジットカードによるゲーム内ジェムの決済から得られているとのことです。
批判に対して48時間のアートテストで逆指名
この投稿はネット上で大きな物議を醸しました。「プロンプトを入力するだけなら幼稚園児でもできる」という批判に対し、公式アカウントは「これに必要なスキルと才能を無視するのは常軌を逸している」と反論しました。
さらに開発元は反発するアーティストたちに対し、48時間のアートテストに挑戦するよう呼びかけました。同等のクオリティを再現できた者には、AIプロンプト担当者のアシスタントとしての採用を検討するとまで言い放っています。
公開されているカードを見る限り、モンスターの足先などに多少の違和感があったり、既存の大手ゲームに似た既視感があったりするものの、商用ゲームとして破綻していない水準には達しています。
なぜ重要か
私たちは、ゲーム業界における生成AIの活用が「倫理的な議論」の段階を過ぎ、「実利を取る現場での既成事実化」へ急速にシフトした象徴的な出来事だと考えています。「マジック:ザ・ギャザリング」のウィザーズ・オブ・ザ・コーストなどがAI使用で批判を浴びて謝罪したのに対し、中小スタジオは開き直ってAI活用をアピール材料にし始めています。
インディー開発者にとって、1000枚を超える商用アートをわずか9万ドルで揃えられるメリットは抗いがたい魅力です。従来のスタジオ体制では予算的にも時間的にも到底実現できないスケールだからです。
ただし、誰でもプロンプトを打てば時給1500ドルを稼げるわけではありません。この人物が評価されているのは、15年のデジタルアート経験に基づく入念な加筆修正力があるからです。AIに仕事を奪われないための鍵は、ツールの指示出しそのものではなく、最終成果物の品質を見極めて仕上げる基礎スキルにあると見られます。
情報源 (1)
- pcgamer.com(新しいタブで開きます)原文pcgamer.com