人型ロボットの敏捷性を引き出す「ASAP」、Unitree G1で全身動作を実証
2025年、研究チームはシミュレーションと実環境の物理ギャップを克服する2段階フレームワーク「ASAP」を発表した。シミュレーション事前学習と実機から得た残差アクションモデルを組み合わせ、Unitree G1ロボットで高精度かつ俊敏な全身動作の制御に成功している。
シミュレーション内では軽やかに動く人型ロボットも、いざ現実世界に出すと動きがぎこちなくなることが多々あります。仮想環境と現実の物理法則の間にあるズレは、ロボット開発における長年の難題でした。
研究チームは、この課題を打破して俊敏な全身運動を実現する新手法「ASAP(Aligning Simulation and Real Physics)」を発表しました。
慎重すぎて鈍くなる従来手法からの脱却
これまで現実とシミュレータのギャップを埋める手法としては、システム同定やドメインランダム化が主流でした。
しかし、ドメインランダム化は環境パラメータを過剰に乱すため、完成した動作ポリシーが過度に慎重になり、俊敏性が削がれてしまう問題がありました。
ASAP は 2 段階のアプローチを採用しています。まず第 1 段階として、人体のモーションキャプチャデータを用いて、シミュレータ上で全身の動作追従ポリシーを事前学習させます。
第 2 段階では、そのポリシーを実機で走らせて現実のデータを収集し、仮想と現実の差異を補正する「デルタアクションモデル」を学習させます。現実のモーターや摩擦のクセを誤差として学習する仕組みです。
そして、このデルタモデルをシミュレータ側に統合し、実世界の挙動を反映させた状態で事前学習済みポリシーをファインチューニングします。
Unitree G1 実機での検証
研究チームは、IsaacGym から IsaacSim、IsaacGym から Genesis というシミュレータ間での検証に加え、Unitree(宇樹科技)の人型ロボット「G1」実機にも適用しました。
その結果、従来のドメインランダム化やシステム同定と比較して追従誤差が大幅に低減し、全身の協調性とアジリティが明確に向上しました。
実機ではこれまで転倒や崩壊につながりやすかった高難度のアジャイル動作も、スムーズに再現できることを確認しています。
なぜ重要か
ヒューマノイドロボットの開発者にとって、シミュレーションから実機への移行コストは常に悩みの種でした。ASAP のような枠組みを使えば、敏捷性を犠牲にすることなく、短期間で高品質な動作を実機へ移植できる道が開けます。
業界全体にとっても、歩行や低速作業にとどまらず、素早い反応やダイナミックな全身協調が求められる現場へのロボット投入を後押しする成果です。
シミュレータ自体を完璧に作り直すのではなく、アクションの差分をフィードバックして仮想空間側を補正する発想は非常に現実的だと評価できます。一方で、長時間の稼働に伴うモーターの熱ダレや機体の経年劣化に対して、この残差モデルがどこまで適応し続けられるかは注視していく必要があります。
情報源 (1)
- agile.human2humanoid.com(新しいタブで開きます)原文agile.human2humanoid.com