ARM、スマホ向け超解像技術「Neural Super Sampling」発表 540pから1080pへ
ARMは火曜日、スマートフォン向けに特化したAI超解像技術「Neural Super Sampling」を発表した。AIモデルを活用して540pの描画画面を1080pへ引き上げ、画質を損なわずに負荷とバッテリー消費を抑える。ただし将来のチップやゲームへの統合が必要で、普及には少なくとも1年以上かかる見込みだ。

最新のスマートフォンで大作ゲームを動かそうとすると、本体がすぐに熱を持ち、輪郭がギザギザした粗い画質にがっかりすることが珍しくありません。PCの世界では、解像度を落として描画し、AIで高画質に復元する超解像技術が当たり前になりました。そして今回、大半のスマホ向けチップを手がけるARMが、この仕組みをモバイル向けに本格導入する方針を明らかにしました。
540pから1080pをAIで復元する
ARMは将来のチップに組み込む新技術「Neural Super Sampling」の詳細を発表しました。スマホ特有の小さな筐体と厳しい電力制限に合わせて一から設計された、モバイル特化型のAI超解像技術です。
仕組みは明快です。ゲーム内部では負荷の軽い540pで映像をレンダリングし、残りの大半のピクセルは学習済みAIモデルが推論して補完、最終的に1080pの高精細映像として出力します。ARMによると、輪郭がぼやけたりテクスチャが潰れたりすることなく、本来の高解像度描画に極めて近い画質が得られるとしています。
同社は以前にも時間軸情報を使う「Accuracy Super Resolution」を提供していましたが、スマホの環境ではスケーリングに限界がありました。そこで、AIモデルを活用するニューラル方式へ舵を切った形です。
描画負荷を大幅に削減できれば、バッテリー持ちの改善に直結します。『崩壊:スターレイル』のような重い3Dタイトルを満喫しようとすると、あっという間に電池が減っていきますが、AIにピクセル生成を肩代わりさせれば発熱も抑えられます。
実用化までは最低でも1年以上の待ち時間
もっとも、この技術が手元のスマホに届くまでには越えるべき壁がいくつもあります。
まずハードウェアの対応です。各チップメーカーがARMの設計を採用し、ニューラル処理に対応した専用ハードを組み込んだチップを量産する必要があります。そのため、実際の端末に搭載されるのは早くても1年以上先になると見られています。
次に描画遅延の懸念があります。超解像処理を挟むことでフレーム生成にわずかなタイムラグが生じ、メーカーのGPU設計次第ではゲームプレイ中に操作の遅れを感じるリスクがあります。
ゲーム側の対応も欠かせません。ARMはUnreal Engine 5向けのプラグインを提供するとしていますが、開発スタジオが対応を進めるには、対応端末が市場に十分普及することが前提になります。
なぜ重要か
ユーザーにとっての価値は、手持ちのスマホが発熱を気にせず重いゲームを遊べる本物の携帯ゲーム機に近づく点にあります。バッテリー消費を抑えながら家庭用ゲーム機並みの精細な映像を楽しめるなら、試してみる価値は十分にあります。
業界全体への影響も見逃せません。現在、世界のモバイルゲーム人口はPCや専用ゲーム機を上回っています。『原神』を開発するHoYoverseがハード性能やアプリ容量の制約を理由にPS4版の提供を終了した一方でスマホ版の配信を継続しているように、スマホの基本性能自体は旧世代機を追い越しつつあります。ボトルネックだった熱と消費電力の壁を崩す手段として、基盤アーキテクチャのARMが標準的な超解像を用意する意義は大きいです。
ただし、ARMのアプローチには課題もあります。Nvidiaのように自社でチップを完成させて販売するわけではないため、最終的に普及するかどうかはパートナー企業の実装次第です。メーカーごとに対応がバラバラになったり、遅延の解消が不十分だったりすれば、過去のスマホ向けレイトレーシングのように実用性の乏しいアピール止まりになる懸念は残ります。
情報源 (1)
- gizmodo.com(新しいタブで開きます)原文gizmodo.com