Armが初の自社製CPU開発へ、今夏投入か Metaが導入検討と報道
英Armがデータセンター向けサーバー用CPUを自社開発し、早ければ今夏にも投入すると英FT紙が報じた。Metaなどがカスタマイズ導入を検討中とされる。従来のライセンス供与から自社製造への転換となり、ソフトバンク主導のAI戦略の一環としてIntelやAMDと直接競合する見込みだ。
長年にわたり、英Armは半導体業界において中立的な設計図の提供者として振る舞ってきました。自らチップを製造することはなく、NvidiaやAppleといった顧客にアーキテクチャのライセンスを供与する立場を貫いてきたのです。
しかし、その長年のビジネスモデルが大きな転換点を迎えようとしています。
自社製チップの投入へ舵を切るArm
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は関係者の話として、Armが早ければ今年の夏にも同社初となる自社製チップを発表する可能性があると報じました。
ライセンス供与にとどまらず、自社ブランドのチップを直接供給することは、Armの基本路線を根底から覆す動きとなります。
報道によると、開発中のチップは大規模データセンターのサーバー向けCPUであり、Metaなどの主要顧客向けに高度なカスタマイズが施される見通しです。
これが実現すれば、Armは世界のデータセンター向けCPU市場を長年支配してきたIntelやAMDと直接競合することになります。
なお、Armの半導体開発に関しては、日本経済新聞が5月に、同社がAI半導体部門を立ち上げ、今年の春までに試作品を完成させ、秋には量産に入る計画だと報じていました。
今回の報道に対し、Armはコメントを控え、Metaからの回答も得られていません。
孫正義氏が描く5000億ドルのインフラ構想
Armにチップ製造への参入を促しているのは、親会社であるソフトバンクグループを率いる孫正義氏です。
FTによれば、孫氏はAIインフラ構想の一環として、Armに自社製半導体の製造へ踏み込ませたいと考えているとされます。
孫氏は現在、OpenAIのサム・アルトマン氏やOracleのラリー・エリソン氏とともに、米国内で5000億ドル規模のAIインフラを構築する巨大プロジェクト「スターゲート(Stargate)」を主導しています。
この合弁事業は、今後4年間で5000億ドルを投じる計画で、ソフトバンクが資金面を主導し、OpenAIが運用を担います。孫氏自身がスターゲートの会長に就任する予定です。
すでに初期投資として1000億ドルの拠出が決まっており、OpenAI、ソフトバンク、Oracle、アブダビ拠点のMGXが初期出資者として名を連ねています。
なぜ重要か
Metaをはじめとする巨大クラウド事業者にとって、自社のワークロードに特化したArm純正のサーバー向けCPUを直接調達できるようになれば、電力効率の向上だけでなく、IntelやAMDに対する価格交渉力を大きく高めることができます。
一方で業界全体にとっては、これまでの業界秩序を大きく揺るがす動きです。私たちは、Armが「設計資産のライセンサー」と「チップメーカー」という相反する立場を同時に取ることには、大きな摩擦が伴うと見ています。NvidiaやQualcommなどの既存の顧客からライセンス料を受け取りながら、同時に自社製チップで顧客の市場を奪いにいく構図になるからです。
それでも孫氏の視点に立てば、この決断は極めて合理的と言えます。総額5000億ドルに及ぶスターゲート構想を形にする上で、単なる設計ライセンス料の回収だけでは得られる果実が限られます。AIインフラの最上流からチップそのものまでを自前で押さえることで、莫大な経済的価値を取り込む狙いが透けて見えます。
ただし、IPの設計と実際の半導体の量産・供給管理とでは求められるケイパビリティが全く異なります。歩留まりの維持や手厚いサポート体制を築けるかどうか、Armにとって真価が問われる挑戦になりそうです。
情報源 (1)
- qz.com(新しいタブで開きます)原文qz.com