Anthropicが商用化へ始動:厳選スタートアップへ文章生成AIを提供
Anthropicが一部のパートナー向けに文章生成AIモデルの提供を開始した。リーガルテックのRobin AIが初の商用パートナーとなり、契約書の作成や交渉支援向けにモデルをファインチューニングしている。研究重視だった同社が収益化とOpenAI対抗に向けて本格的に動き出した格好だ。
OpenAI の元幹部たちが立ち上げた Anthropic が、ついに研究室のドアを商業向けに開け始めました。
TechCrunch によると、同社はテキスト生成 AI モデルへのアクセス権を一部のスタートアップ企業へ限定的に提供し始めた模様です。これまでは学術研究や限定的なプレビューにとどまっていましたが、本格的な収益化へと舵を切った形です。
最初の商業パートナーはリーガルテック
Anthropic のモデル導入を最初に公表した商業パートナーは、契約書の作成や交渉を支援するリーガルテック企業の Robin AI です。同社は Plural や Google Black Founders Fund などから 1300 万ドル以上を調達しています。
Robin AI の CEO である Richard Robinson 氏によると、同社は Anthropic のモデルを独自の法務データセットでファインチューニングして活用しているとのことです。
Robinson 氏は、Anthropic の AI 安全性へのこだわりが、弁護士がチェックを行う自社の「Lawyer-in-the-loop」設計と合致しており、AI 特有のハルシネーション(幻覚)リスクを効果的に抑えられると説明しています。
以前から Quora の対話アプリ「Poe」にも Anthropic の技術が使われていましたが、あちらは実験的な位置づけで収益化はされていません。
今回提供されているのが昨年末にテスト公開された「Claude」なのか、その派生モデルなのかは明かされていません。現在何社に提供されているのか、今後どれだけのモデルを展開するかも非公開のままです。
安全性重視の理念と膨らむコストの現実
Anthropic は 2021 年、OpenAI の研究担当副社長だった Dario Amodei 氏らが、OpenAI の商業主義化に懸念を抱いて設立したパブリック・ベネフィット・コーポレーション(公益法人)です。
同社は「Constitutional AI(憲法 AI)」と呼ばれる手法を開発し、原則に基づいた安全な AI システムの構築を目指してきました。実際、テスト版 Claude の評判は上々でしたが、誤情報や危険な回答を完全には排除できていない課題も抱えています。
一方で、最先端モデルの開発と運用には天文学的なコストがかかります。
同社は過去に元 FTX のサム・バンクマン=フリード氏らから 5 億 8000 万ドルを調達したほか、最近では Google から 3 億ドルの出資を受け入れ、Google Cloud を優先プロバイダーに指定しました。投資家の期待とサーバー代の重圧を前に、API の有料提供による事業化は避けられない道でした。
なぜ重要か
OpenAI の独壇場に見えた生成 AI の商用 API 市場に、最強の対抗馬が正式に参入したことを意味します。
ユーザーや開発者にとって、安全性や制御性を重視したモデルの選択肢が増えるのは大きなメリットです。特に法律や医療など、ハルシネーションが許されない業務アプリケーションを構築したい企業にとっては有力な候補になります。ただし現時点では招待制であり、価格体系や対象モデルも明かされていないため、一般の開発者がすぐに試せる段階ではありません。
業界全体から見れば、OpenAI や Cohere、AI21 Labs との顧客獲得競争がいよいよ本格化します。
私たちは、Robin AI のような「専門家が間に入る」垂直型 SaaS を最初のショーケースに選んだのは賢明な判断だと見ています。モデルの粗を人間の介入でカバーできるからです。しかし、営利化とスケールを急ぐ中で、創業理由でもあった「安全性の追求」という看板をどこまで守り続けられるのか、Anthropic 自身のバランス感覚が問われることになります。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com