Anthropicが米エネルギー報告書公開、2028年までにAI向け50GWの電力確保を提言
Anthropicは米国のAIインフラ構築を促すエネルギー報告書を発表した。中国との競争を念頭に、2028年までに米国のAI分野全体で少なくとも50GWの電力が必要になると試算。連邦所有地の活用や原発・地熱発電の許認可迅速化を米政府に求めている。

Anthropicは、米国のエネルギー政策に関する提言レポート「Build AI in America」を公開しました。最先端モデルの開発を続けるには、アルゴリズムの進化だけでなく、桁違いの電力供給と送電網の整備が不可欠だと米政府に警鐘を鳴らしています。
同社が示した予測値は非常に強烈です。Anthropicは、自社の単一の先端AIモデルを学習させるだけで、2027年には2ギガワット、2028年には5ギガワット規模のデータセンターが必要になると試算しています。
米国の主要な競合各社の需要を合わせると、2028年までにフロンティアモデルの学習だけで20〜25ギガワットの電力が必要になります。これはニューヨーク市のピーク時電力消費量の約2倍に相当します。日常的な推論需要も考慮すれば、米国AI業界全体で2028年までに少なくとも50ギガワットの発電容量を確保しなければならないと訴えています。
中国との格差を警告し、連邦政府に規制緩和を直談判
レポートが強い危機感を示しているのが、インフラ整備のスピード差です。米国が昨年追加した発電容量が数十ギガワットにとどまるのに対し、中国は400ギガワット以上を増設しました。このままでは電力不足によって米国のAI競争力が失われかねないと指摘しています。
トランプ政権が進める原子力発電目標や環境審査(NEPA)の迅速化は評価しつつも、同社はさらなる踏み込んだ対策として2つの柱を提案しました。
第1の柱では、州や地方自治体による数年がかりの用途地域審査を回避するため、連邦都有地をAIデータセンター用地として直接開放することを求めています。さらに、国家安全保障に関わる重要な施設については、既存の連邦権限を使って系統連系を最優先で処理すべきだと主張しています。
第2の柱では、地熱、天然ガス、次世代原子力発電の許認可加速や、主要な送電網部材およびガスタービンの戦略的備蓄などを盛り込みました。また、陸軍工兵隊の全国包括許可を活用してデータセンターの水質審査を迅速化することも求めています。
なぜ重要か
AI研究所がエネルギー政策の提言書をまとめたという事実は、AIの主戦場がチップの調達から発電所と送電網の確保へ完全に移行したことを物語っています。
一般の開発者や企業にとって、このインフラの壁はモデルの利用料金やAPIの供給制限に直結します。電力がボトルネックになれば、最先端モデルの計算資源は逼迫し、コストが思うように下がらない状況が続く可能性があります。
地政学の観点からも、中国の圧倒的な発電設備増設ペースを引き合いに出したことで、電力供給が国家安全保障の最重要アジェンダとして扱われる機運が高まるでしょう。エネルギー業界や送電設備メーカーにとって、AI需要は長期的な超大型の追い風になります。
一方で、この提言には危うさもあります。地方の許認可を飛び越えてテック大手に電力を優先配分するような措置は、一般市民の電気代高騰や環境破壊への懸念を生み、地域社会との激しい摩擦を引き起こす可能性があります。
情報源 (1)
- anthropic.com(新しいタブで開きます)原文anthropic.com