Anthropic、Claude向けエージェント設計の3パターンを公開 足場を削りモデルに委ねる
Anthropicは知能、レイテンシ、コストのバランスをとるClaude向けエージェント設計の3パターンを公開した。Bashなどモデルが得意な基本ツールを活かし、コード実行によるツール呼び出しやコンテキスト管理をモデル自身に委ねる方針を提示。静的プロンプトを先頭に置いてキャッシュ効率を高める原則も示された。

Anthropicの共同創業者Chris Olah氏は、Claudeのような生成AIは「作られるというより、育つものだ」と語っています。研究者が成長の条件を整えるものの、どんな能力がいつ開花するかは完全には予測できません。そのため、開発者が従来の前提で作ったAIエージェントの足場(Agent Harness)は、モデルが賢くなるにつれてすぐに時代遅れになってしまいます。
Anthropicは4月2日、Claudeの知性を最大限に引き出しつつ、遅延とコストを抑えるための3つのエージェント設計パターンを公開しました。要点は明快で、複雑な外付けロジックを削ぎ落とし、モデル自身にオーケストレーションや記憶を任せようというアプローチです。
bashとコード実行で、無駄なトークン消費を削る
多くの開発者は、エージェント専用の複雑なカスタムツールを作り込みがちです。しかしAnthropicは、モデルが学習済みで最も扱い慣れている「bash」と「テキストエディタ」こそ最強のツールだと指摘します。実際、2024年後半にClaude 3.5 SonnetがSWE-bench Verifiedで49%の最高スコアを記録した際も、使っていたのはこの2つだけでした。
最大の問題は、ツール呼び出しの結果をすべてコンテキストウィンドウに戻してしまう設計です。巨大な表データの1列だけを見たい場合でも、全データをトークンとして読み込めばコストも遅延も跳ね上がります。Anthropicの推奨は、Claudeにコード実行ツールを与え、必要な処理をスクリプトで完結させる手法です。ウェブ閲覧のベンチマークBrowseCompでは、Opus 4.6自身に出力をフィルタリングさせたところ、正解率が45.3%から61.6%へと大幅に向上しました。
ポケモンを攻略するClaudeの「記憶術」
長期的なコンテキスト管理についても、複雑な外部検索システムに頼る必要は薄れつつあります。Anthropicは、Claudeにローカルのファイルフォルダを与えて自律的にメモを取らせるアプローチを紹介しています。
興味深いのが「ポケットモンスター」をプレイさせた実験です。旧型のSonnet 3.5はNPCの会話を一言一句書き写すような使い方をし、1万4000ステップ経っても2つ目の街で立ち往生していました。キャタピーとビードルの違いについて重複したメモを残す始末です。一方、Opus 4.6は同じステップ数で3つのジムバッジを獲得し、メモは整理された10ファイルのみでした。「マダツボミのねむりごな対策にはかみつくで速攻をかける」といった実践的な反省点を自ら記録していたのです。
また、入力コストを10分の1に抑えるプロンプトキャッシュを活かすため、システムプロンプトなど静的コンテンツを先頭に配置し、セッション中のモデル変更を避けるといった具体的な実装ノウハウも提示されています。
なぜ重要か
この発表は、複雑になりすぎていたエージェント開発フレームワークに対する痛烈なカウンターと言えます。多くのエンジニアが外側のコードで無理やり制御しようとしていたタスクの多くは、最新モデルにスクリプトを書かせるだけで解決できるようになっています。
開発者にとっては、今すぐ自社のエージェント実装を見直す価値があります。中間データの処理をトークンとして往復させるのをやめ、サンドボックス内のコード実行に置き換えるだけで、APIコストと応答速度を劇的に改善できるはずです。
ただし、このアプローチを成立させるには、安全なコード実行環境の整備が前提になります。Anthropicが言うように、取り返しのつかないAPI呼び出しや権限変更の場面では、専用の宣言的ツールを用意して人間の承認を挟む必要があります。モデルを信頼して任せる部分と、強固な防壁で縛る部分の見極めが、今後のエージェント設計の成否を分けることになりそうです。
情報源 (1)
- claude.com(新しいタブで開きます)原文claude.com