AMC劇場、AI短編アニメの上映を取りやめ ネットの批判殺到を受け
米映画館大手AMC Theatresは、AI生成短編アニメ『Thanksgiving Day』の幕前上映を取りやめると発表した。映画祭の受賞特典として全米劇場での上映が予定されていたが、ネット上で反発が殺到したため急遽不参加を表明。伝統的な映画館でのAI作品展開の難しさが浮き彫りとなった。

来月にも、全米の映画館で本編上映前のスクリーンに生成AIアニメーション短編が登場する予定でした。しかし、その計画がネット上に漏れ伝わるや否や猛烈な反発が巻き起こり、全米最大の映画館チェーンAMCは即座に上映拒否を決めました。
騒動の発端となったのは、新設の「Frame Forward AI アニメーション映画祭」です。カザフスタンの映像作家イーゴリ・アルフェロフ氏による短編作品『Thanksgiving Day』がグランプリを獲得し、その副賞として全米の映画館チェーンで2週間にわたり本編前に上映される権利が与えられていました。
映画館側ではなく「幕間広告」枠の仕掛け
本作は、ゴミ収集箱のような宇宙船で旅をするクマとカモノハシの助手が、悪徳宇宙警察などのトラブルに巻き込まれる風刺アニメです。Deadlineによると、制作にはGemini 3.1やNano Banana ProといったAIツールが使われていました。
受賞作が映画館で流れるという情報がSNSに拡散すると、映画ファンから「AI作品の上映を容認するのか」と批判が殺到し、矛先はAMCシアターズに向けられました。
しかし、この企画は映画館側が独自に編成したものではありませんでした。本編開始前の約20分間に流れる広告枠を統括する外部業者スクリーンビジョン・メディアが仕掛けたものだったのです。同社は米国の複数チェーンに広告を提供しており、AMCでも全米拠点の3割未満でしか展開していません。
AMCは米ハリウッド・レポーターの取材に対し、自社は作品の制作や企画に関与しておらず、AMCの劇場では一切上映しない方針をスクリーンビジョン側に通告したと明かしました。映画祭の共同主催者側は、映画館チェーンの慎重な姿勢に理解を示しつつ、今後はニューヨークなどで建設予定の没入型シアター展開へ切り替えると説明しています。
なぜ重要か
今回の騒動は、生成AIで作られた物語作品が伝統的な映画興行の主流に入り込もうとした際、どれほど強い拒絶反応に直面するかを浮き彫りにしました。
これまでにも2025年8月にRunway主催のAI映画祭短編がImax10館で上映された前例はありました。しかし、それは特定のファンや関係者を対象とした限定的なイベント上映に過ぎません。一般の映画ファンが日常的に足を運ぶ商業映画館で、広範囲にわたってAI短編が流される試みは今回が事実上初めてとなるはずでした。
私たちは、AMCの即座の幕引きは極めて現実的な危機管理判断だったと考えます。ハリウッドでは俳優や脚本家のストライキを通じてAI利用に対する警戒感が根強く残っており、一般の映画ファンにとってもクリエイターの権利軽視に対する嫌悪感は依然として強いままです。
幕間広告という商業枠を使って外堀から大スクリーン進出を狙ったプロモーション手法は、抜け道としては巧妙でしたが、観客の感情的な反発を完全に見誤っていました。観客にとっては広告枠であろうと、スクリーンに映し出されれば映画館のお墨付きと受け取られます。倫理的な合意や作品自体の受容が進まない限り、AI映画が一般のシネコンに進出する道はまだまだ険しそうです。
情報源 (1)
- hollywoodreporter.com(新しいタブで開きます)原文hollywoodreporter.com