Amazon MGM Studiosが生成AI制作基金を設立、Prime Video向けアニメ3作を承認
Amazon MGM StudiosはAWSと連携し、生成AIクリエイター基金および制作プラットフォーム「Project Nara」を発表した。MayaやBlenderなど既存ツールと連携し、Prime Video向けアニメ3作の制作を承認。パイロット版をわずか5週間で仕上げる高速制作を目指す。

生成AIをめぐり激しいストライキと議論を重ねてきたハリウッドに対し、Amazonは正面から資金を投じる道を選びました。
Amazon MGMスタジオは、カルバーシティで開催された「2026 AI on the Lot」にて、映像クリエイターや新興スタジオを支援する「GenAI Creators’ Fund」を立ち上げたと発表しました。あわせてAWSと共同開発した、映像制作専用のコラボレーション基盤「Project Nara」の存在も明らかにしています。
ベテラン主導で進む、5週間のパイロット制作
今回の取り組みで特徴的なのは、単なる実験動画ではなく、Prime Video向けの正規シリーズとして3作のアニメーションがすでに制作承認されている点です。
『ブック・オブ・ライフ』を手掛けたホルヘ・R・グティエレス監督による『Punky Duck』、『スポンジ・ボブ』の開発に携わった元ニコロデオン社長のアルビー・ヘヒト氏による『Love, Diana Music Hunters』、そしてBuzzFeed Studiosによる『Cupcake & Friends』がラインナップに名を連ねています。
制作スピードの検証も徹底しています。Amazon MGMスタジオCOOのアルバート・チェン氏によると、パイロット版の制作期限はわずか5週間に設定されました。
業界の反発を意識し、チェン氏は「あくまで人間が中心」と強調しています。すべての作品で人間の俳優や声優を起用しており、既存のAI動画ツールが抱える「言うことを聞かない」という現場の不満を解消するためのプラットフォームだと説明しています。
MayaやBlenderに溶け込む制作基盤
独自開発されたProject Naraは、クリエイターに使い慣れたソフトを捨てさせる設計にはなっていません。
Maya、Blender、Nuke、Unreal Engine、Adobe製品群など、現場で日常的に使われているツール群にAI制作エージェントを統合する形で機能します。特定モデルに依存しない構造を取り、外部の有力モデルとAmazon独自モデルを組み合わせて運用する形です。
スタジオ側が最も警戒する著作権問題に対しても、来歴追跡(Provenance Tracking)機能を備え、IP保護に配慮した設計となっています。
AWS幹部のサミラ・パナ・バクティアル氏が指摘するように、インフラから制作ツール、スタジオ、そしてPrime Videoという配信網まで、エンドツーエンドで垂直統合された環境を持つのは現在の業界でAmazonだけです。
なぜ重要か
映像制作に携わるクリエイターにとって、プリプロやパイロット版制作にかかる数か月から1年の工期が5週間に短縮されるインパクトは極めて大きいです。ブラウザ上で完結するトイツールではなく、MayaやBlenderといった現場のパイプラインにAIが直接組み込まれることで、少人数チームでもメジャー級の企画を具現化できる可能性が開かれます。
業界全体で見ても、Amazonの立ち回りは非常に巧みです。OpenAIなどのモデル企業がハリウッドへの売り込みに苦戦する中、Amazonは制作現場の文脈に合わせたUIとIP保護機能を用意し、自社スタジオの予算をつけて実績を作りに行っています。人間の俳優や声優を起用し続ける姿勢を見せることで、組合との不要な摩擦を避ける配慮も抜かりありません。
ただし、課題も残されています。5週間という短期間で仕上げられた映像が、AI特有の無機質さや違和感をどこまで払拭できているかは未知数です。Project Naraが真にクリエイターの表現力を拡張する武器となるのか、単なる制作費削減の看板に留まるのかは、Prime Videoで配信された際の視聴者の反応によって試されることになります。
情報源 (1)
- variety.com(新しいタブで開きます)原文variety.com