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業界動向

米Amazon、MetaのAI「Muse」による代行購入を遮断 規約違反とセキュリティ懸念で

公開 拡散指数 57

米Amazonは日曜夜、MetaのパーソナルAI「Muse」によるサイト内での代行購入をブロックした。事前の通知がなく、ボット識別を行わずにユーザーの認証情報を保存しているとして利用規約違反を指摘。AIが代理で買い物をする「エージェント型EC」を巡り、両社の対立が表面化した格好だ。

米Amazon、MetaのAI「Muse」による代行購入を遮断 規約違反とセキュリティ懸念で
画像:geekwire.com

Metaの新しいAIアシスタント「Muse」が米国のApp Storeで首位を獲得してからわずか数日、世界最大のECサイトへの扉が突如として閉ざされました。

週末、Museを使ってAmazon.comで買い物をしようとしたユーザーの画面に、未承認のAIエージェントによる継続的なアクセスは利用規約に違反するという警告が表示されるようになりました。The Registerが椅子を探して購入手続きを進めるテストを行ったところ、検索ページにすら到達できずに遮断されたといいます。

Amazonは、Metaに対して自社サイトを対象から除外するよう事前に求めたものの拒否されたため、アクセス遮断に踏み切ったと説明しています。エージェントが身元を明かさずにサイトを巡回し、認証情報を取得・保存しているように見える点がセキュリティとプライバシー上の懸念だとしています。

人間のふりをして巡回するAI

9月8日に公開されたMuseは、単なる質問応答にとどまらず、複数ステップの作業を代行するパーソナルエージェントです。Metaの公開資料によると、公開APIがないサービスであっても、仮想環境上のブラウザを使って人間と同じように操作することで連携を実現しています。

Meta側は、パスワードや決済情報は暗号化された安全な領域に保存され、Muse自身がそれらを直接見ることはないと説明しています。また、Sentinelと呼ばれる監視エージェントが通信を精査し、購入などの重要アクションには必ず人間の承認を挟む仕組みになっています。

これに対しAmazonは、身元を伏せたAIがユーザーのアカウントや注文履歴にアクセスすることは、同意のない第三者が社内システムに入り込むようなものだと批判しています。出前アプリが飲食店と、旅行代理店が航空会社と提携を結ぶように、外部の代理購入サービスも加盟店の合意を得て正規に接続すべきだという主張です。

両社は決して疎遠な関係ではありません。2023年からはInstagram内でのAmazon商品購入連携を行っており、今年4月にはMetaが数千億円規模でAWSのGravitonチップを利用する契約を結んでいます。それでもなお、購買インターフェースの主導権争いにおいては妥協が成立しませんでした。

680億ドル超の広告ビジネスを守る防壁

今回の措置の背景には、セキュリティだけでなく莫大な広告収入の防衛があります。Amazonの昨年の広告サービス売上高は約686億ドルに達しており、その多くは検索結果に表示されるスポンサー商品枠が生み出しています。

もしAIが最適な商品を直接選んで決済まで済ませてしまえば、ユーザーが検索画面を眺める時間は激減し、出品者が高い費用を払って掲載している広告が見られなくなってしまいます。Amazonにとっては、売上は維持できても利益率の高い広告収益が吹き飛ぶリスクがあります。

法的な対抗手段の選択も巧妙です。Amazonは以前、Cometブラウザを展開するPerplexityを提訴しましたが、第9巡回区控訴裁判所は8月4日、ユーザー自身の代理アクセスは連邦ハッキング防止法違反とは言えないとして仮処分命令を取り消しました。これを受けてAmazonは、法律ではなくサイトの利用規約違反を盾に遮断する戦術へと切り替えました。

なお、Amazon自身も5月にAlexa for Shoppingを投入し、Buy for Meという独自の代理購入機能を展開しています。自社製ツールは相手先に身元を開示し、オプトアウトも認めているとして正当性をアピールしています。

なぜ重要か

一般ユーザーにとって、AIに面倒な買い物やクーポン探しを丸投げできる体験は極めて魅力的であり、Museが瞬く間に人気アプリとなった理由もそこにあります。しかし、主要なショッピングサイトが相次いで門前払いを始めれば、エージェントの利便性は大きく損なわれ、結局は元の手作業に戻らざるを得ません。

業界全体にとって、今回の対立は「AIエージェント経済」が直面する最大の壁を浮き彫りにしました。私たちは、ブラウザを自動操作して人間になりすますアプローチは、プラットフォーマーの規約改定一つで簡単に封じられる脆い手法だと考えます。

Amazonが広告枠という収益源を守ろうとする姿勢は極めて合理的です。今後、MetaなどのAI開発元がショッピング機能を安定提供するためには、無断での巡回を諦め、広告モデルや手数料の分配を含めた正規の提携交渉に応じるほかないと見られます。

情報源 (2)

  1. [1]
    geekwire.com(新しいタブで開きます)原文geekwire.com
  2. [2]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com

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