SDSU研究者らが株価変動を予測するAI「ALERTA-Net」を発表
サウスダコタ州立大学などの研究チームが、株価の動きとボラティリティを予測するAIモデル「ALERTA-Net」を発表した。マクロ経済、検索エンジン、SNSのデータを統合し、41銘柄の優良株テストでDP-LSTMなどの既存モデルを上回る精度を記録。急激な市場変動を捉える新たな試みとして注目される。

株価の動きを捉えようとするとき、過去のチャートを追いかけるテクニカル分析と、財務や景気動向を見るファンダメンタルズ分析の2つが長く使われてきました。しかし、どちらの手法も突発的な市場のうねりや世論の急変には脆いのが現実です。
サウスダコタ州立大学のKaiqun Fu助教とYangxiao Baiらの研究チームは、バージニア工科大学やテキサスA&M大学コーパスクリスティ校と共同で、この課題に挑むAIモデル「ALERTA-Net」を開発しました。論文はプレプリントサーバーarXivで公開されています。
700万件のX投稿とFRBデータを単一ネットワークに統合
研究チームによると、テクニカル分析は過去データに依存しすぎるあまり突発イベントを見落としやすく、取引シグナルが増幅して現実の経済環境から乖離するエコーチェンバーを生みがちです。一方でファンダメンタルズ分析は、マクロ経済と株式市場の相互作用を軽視する傾向があります。
さらに既存の予測モデルの多くは、株価が上がるか下がるかのトレンド予測ばかりに注目し、その変動の規模を無視しがちでした。実際の市場では、小幅な値動きと急激な乱高下では意味がまったく異なります。
ALERTA-Netは、マクロ経済データ、検索エンジンデータ、ソーシャルメディアデータの3つを統合した深層学習ネットワークです。研究チームは41銘柄の優良株を対象に、Yahoo Financeから取得した3年分の価格推移と、米連邦準備制度理事会(FRB)の過去データを入力しました。
あわせてX(旧Twitter)上で41銘柄に言及した700万件以上の投稿を収集。日ごとの投稿量だけでなく、個々のツイートの感情分析結果もパラメータとして組み込みました。検証では、株価予測で知られるDP-LSTMや他のベースラインモデルを上回る精度を記録したといいます。
なぜ重要か
個人投資家が今すぐ実用的な自動売買ツールとして使えるわけではありません。対象は流動性の極めて高い41銘柄に限定されており、学術的なバックテストの段階にとどまります。
しかし、クオンツ取引や金融データ分析の潮流という視点で見れば、非常に示唆に富む成果です。現代の市場はSNSの熱狂と金利などのマクロ環境が複雑に絡み合って動いており、従来のチャート分析だけでは太刀打ちできなくなっています。マクロ指標とソーシャル感情を同時に学習させる枠組みは、今後のヘッジファンドの標準装備になる可能性があります。
特に評価できるのは、方向性だけでなく変動の幅(ボラティリティ)を同時に予測対象にした点です。リスク管理やオプション取引においては、方向以上に振れ幅の大きさが致命傷になり得ます。
一方で課題となるのは、SNSデータのノイズです。X上には大量のスパムや相場操縦を狙ったボットが紛れ込んでおり、実戦投入時にはこれら悪意あるシグナルをいかに排除するかが問われることになります。
情報源 (1)
- techxplore.com(新しいタブで開きます)原文techxplore.com