ハリウッドで進む映画制作のAI活用、口パク修正や代役生成で同意権の議論も
FlawlessなどのAIツールが映画制作を変革していると報じられた。俳優の表情を新セリフに合わせて修正したり合成音声で吹き替えたりできる一方、再撮影を削減できる半面、本人の同意や肖像権をめぐる倫理的課題が浮上している。
映画制作で最もコストがかかる問題の一つが、撮影後の修正や再撮影です。セリフを一行変えるだけで役者をスタジオに呼び戻し、莫大な予算が吹き飛ぶことも珍しくありません。
ハリウッドでは現在、こうしたポストプロダクションの工程をAIで置き換える動きが急速に進んでいます。
口の動きから声、スタントまでAIが再現
AI映画制作企業のFlawlessは、新たに録音したセリフに合わせて役者の顔の映像を再生成するニューラルネットワーク技術を開発しました。
Flawlessの共同創業者であるScott Mann氏は、「何が本物で何が偽物か、見分けることはできない」と語っています。
同様の技術を導入する動きは他社にも広がっています。Papercupは吹き替えやナレーション向けに合成音声を生成する技術を展開し、大手VFXスタジオのDigital Domainはスタントダブルが必要な危険なシーンで機械学習を用いて役者の姿を再現しています。
Mann氏によれば、こうしたAI活用は再撮影を不要にするだけでなく、言語の壁を取り払う吹き替えや、映画内のプロダクトプレイスメントを後から差し替えて新たなスポンサー収入を得る道も開くといいます。
契約と同意をめぐる倫理的な懸念
一方で、この技術は役者の権利や同意に関する深刻な倫理的問題を引き起こしています。
テキサス大学オースティン校のScott Stroud准教授は、「役者が同意したと思っていた内容と、実際に画面上で作られるものが一致していない」と指摘します。
契約時には想定していなかったセリフの改変や、スタントダブルへの顔の合成が撮影後に自由に行えるようになれば、役者本人の表現のコントロール権が損なわれる危険性があります。
なぜ重要か
インディペンデント映画の制作者や海外配給を手がけるチームにとって、こうしたツールの恩恵は明確です。予算の制約で諦めていたセリフの修正や、口の動きと音声が完全に一致した多言語展開が低コストで実現できるためです。
一方で、映像内の小道具をデジタル上で差し替えて新たな広告料を稼ぐといった手法には懸念も残ります。
私たちは、ここでの本質的な課題は技術の精度ではなく契約上の線引きにあると考えています。役者の肖像や演技をどこまでAIで加工してよいのかというルールが業界全体で定まらない限り、スタジオと俳優陣の間で大きな権利争議に発展する可能性が高いと見られます。
情報源 (1)
- cacm.acm.org(新しいタブで開きます)原文cacm.acm.org