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「創薬不可能」ながん標的をAIで攻略、膵臓がん新薬で生存期間が倍増

公開 拡散指数 31

創薬困難とされてきたRASタンパク質を阻害する新薬「daraxonrasib」の治験で、進行性膵臓がん患者の生存期間が従来の6.6か月から13.2か月へほぼ倍増したと報じられました。さらに研究チームはAIを活用し、全がんの約70%に関与するp53やMYCなどの難攻不落な標的に対して数百万規模の化合物をスクリーニングしており、がん創薬の大幅な加速が期待されています。

「創薬不可能」ながん標的をAIで攻略、膵臓がん新薬で生存期間が倍増
画像:singularityhub.com

抗がん剤を岩登りのクライマーに例えるなら、最も致命的ながんを引き起こす標的タンパク質は、手がかりが一切ない滑らかな岩壁のようなものでした。

結合できる溝やくぼみが表面に存在しないため、医学界はこれらを長年にわたり「創薬不可能(アンドラッガブル)」と呼び、半ば諦めてきました。

しかし、巧妙な生化学的アプローチとAIスクリーニングの進化により、この難攻不落の壁が崩れ始めています。

6月10日の報道によると、米カリフォルニア州のレボリューション・メディシンズ社が開発した新薬「ダラキソンラシブ(daraxonrasib)」が、進行膵臓がんの臨床試験で化学療法と比較して生存期間をほぼ倍増させたことが明らかになりました。

滑らかな標的に「相乗り」して機能を停止

世界500人の進行膵臓がん患者を対象とした試験において、従来の化学療法群の全生存期間が中央値6.6カ月だったのに対し、新薬投与群は13.2カ月に達しました。副作用の多くは発疹程度にとどまり、患者の疼痛も軽減されたと報告されています。

標的となったRASタンパク質は、1982年にがん遺伝子として特定されて以来、最も重要な治療標的とされてきました。しかし、2021年に米国で初めて承認された阻害薬も、RASファミリーのごく一部の変異にしか効かず、耐性の獲得も課題でした。

ダラキソンラシブの画期的な点は、3種類あるRASファミリーすべてを一括して遮断できる点にあります。

表面がツルツルしたRASに直接結合するのを諦め、RASの立体構造形成を助けるパートナー分子に結合することで、活性化したRAS複合体に「相乗り」してスイッチをオフにするという奇策を採用しました。

AIが加速させる「未踏標的」の攻略

この成功に続き、がんの約70%に関与する「MYC」や、300以上の遺伝子を制御する「p53」といった他のアンドラッガブル標的の攻略もAIによって急加速しています。

ベイラー医科大学の研究チームは、AIを活用して約1000万種類もの化合物をスクリーニングしました。その結果、変異したp53を持つ細胞だけを選択的に自滅させる候補化合物を83種類特定し、そのうち「H3」と呼ばれる化合物がマウス実験で顕著な腫瘍抑制効果を示しました。

また、MYCに対しても、AIを用いてタンパク質の相互作用や結合部位を精密にマッピングし、腫瘍のDNA修復能力を奪う薬剤の探索が進められています。

なぜ重要か

私たちは、この成果が長年治療法の進化から取り残されてきた難治性固形がんの治療体系を根本から変える可能性を秘めていると考えています。

特に「がんの王様」と呼ばれる膵臓がんにおいて、経口薬で延命期間をほぼ倍に延ばし、かつ生活の質を維持できる価値は極めて大きいです。数千万円単位の費用と複雑な工程を要するCAR-T細胞療法と比べても、毎日服用できる低分子化合物は圧倒的に普及しやすく、医療現場の負担も抑えられます。

業界全体にとっても、AIによる数千万件規模の化合物スクリーニングが初期探索のタイムラインを劇的に短縮できることが実証された意義は小さくありません。

もちろん、がん細胞の適応力は凄まじく、長期的な耐性獲得のリスクは依然として残ります。それでも、迂回策を見つけ出す生化学の知恵とAIの探索能力が融合したことで、「創薬不可能」という言葉そのものが過去のものになりつつあるのは間違いありません。

情報源 (1)

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    singularityhub.com(新しいタブで開きます)原文singularityhub.com

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