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研究

18年間の不妊治療に光:コロンビア大、AIで精子を発見し妊娠に成功

公開 拡散指数 32

コロンビア大学の研究チームが開発したAIシステム「STAR」により、18年間不妊に悩んでいた夫婦が第1子を妊娠したと報じられた。無精子症患者の精液から1時間で800万枚以上の画像を解析して極小の精子を特定する仕組み。現在同大学で提供されている。

18年間の不妊治療に光:コロンビア大、AIで精子を発見し妊娠に成功
画像:cnn.com

18年間にわたり体外受精を繰り返し、世界中の不妊治療クリニックを巡っても子どもを授かることができなかった夫婦が、AIの力によって初めての妊娠を果たした。

原因は、精液中に目に見える精子がほとんど存在しない「無精子症」だった。通常は数億個あるはずの精子が視野にまったく捉えられず、培養士が顕微鏡で何時間探しても見つからない極めて重度の男性不妊症だ。

夫婦がコロンビア大学不妊治療センターに持ち込んだ精液サンプルを、独自開発のAIシステムで解析したところ、わずか3個の隠れた精子の検出・回収に成功。体外受精を経て妻が妊娠し、12月に出産を予定している。

1時間に800万枚を撮影し、無傷で微小液滴へ

この技術は「STAR(Sperm Tracking and Recovery)」と呼ばれ、同センターのゼヴ・ウィリアムズ博士らのチームが5年をかけて開発した。

顕微鏡に高速カメラと専用チップを組み合わせ、1時間足らずで800万枚以上の微細画像を撮影する。画像認識アルゴリズムが精子の特徴的な形状を瞬時に判別していく仕組みだ。

精子を検出すると、システムは細胞を傷つけるレーザーや染色剤を一切使わず、ごく微小な培養液の液滴の中にそっと隔離する。熟練の技術者が2日間探してもゼロだった患者のサンプルから、STARがわずか1時間で44個の精子を見つけ出した実績もある。

手術の苦痛と高額な費用を回避する新たな選択肢

米国では不妊原因の最大40%が男性側にあり、そのうち約10%が無精子症とされる。性機能に異常がなく健康そのものに見えるため、不意の宣告にショックを受ける患者も多い。

これまでの治療は、精巣を切開して組織を細かく砕き、精子を探し出す侵襲的な手術が主流だった。痛みが激しく組織を傷つけるリスクがあるため、生涯で数回しか試せない。

STARを用いた検査・分離・凍結の費用は3000ドル弱と見積もられており、身体への負担と費用の両面で患者の敷居を大きく下げる。一方で、ワイル・コーネル医科大学のジャンピエロ・パレルモ教授は、体内での精子形成自体が完全に止まっている患者にはAIであっても精子を見つけることは不可能であり、過度な期待を抱かせるリスクがあると慎重な検証を求めている。

なぜ重要か

私たちは、STARの真の価値は「人間が苦手とする過酷な視覚作業をAIに肩代わりさせた点」にあると考える。顕微鏡下のゴミと細胞の区別を何時間も続ける作業は、どれほど熟練した培養士であっても疲労から見落としが生じやすい。1時間に800万回という超高精度の画像スキャンは、機械学習が最も得意とする領域だ。

患者にとっては、ドナー精子の利用や子どもを持つことの断念を選ぶ前に、体へのメスを入れずに試せる強力なセーフティネットになる。3000ドルという価格設定も、高額な不妊治療全体から見れば極めて現実的な水準といえる。

ただし、現時点で妊娠まで到達した報告はまだ1例にとどまる。AIは「探す精度」を飛躍的に向上させたが、細胞そのものの質や遺伝子の完全性まで変えられるわけではない。それでも、これまで見落とされていたかもしれない数個の生命の種を確実に拾い上げる技術として、今後の生殖医療の標準フローを塗り替える可能性を秘めている。

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