80年間未解読のWW2暗号電報、AIが解読 自ら資料を調査しシミュレータ構築
2026年9月、第2次世界大戦中にエニグマ等で暗号化され80年以上未解読だったドイツ軍電報が、AIの支援により解読された。AIは単なる総当たりではなく、歴史公文書の調査や不鮮明な文字の照合、独自シミュレータの作成を経て暗号を解明した。暗号研究サイトCryptoCellarもAIによる解読成果を公式に認定している。
AIの活用先といえばメールの下書きやコード生成を思い浮かべがちですが、暗号学の世界でその常識を覆す出来事がありました。
2026年9月、歴史的暗号の研究サイトCryptoCellarが1941年の未解読電報リストを更新しました。80年以上にわたり誰にも解けなかった第2次世界大戦時のドイツ軍エニグマ暗号の記録に、AI支援による解読を示す「(AI)」のマークが複数追加されたのです。なかでもわずか82文字の極めて短い暗号文が、GPT-6 Astraによって約10時間で完全に解読されました。
エニグマの基本構造自体は数十年前から解明されています。今回難関だったのは、送受信時のローター設定やプラグボードの配線といった具体的な鍵情報が85年前に失われていた点です。82文字という短さでは統計的な手がかりが極端に少なく、従来の暗号解読手法では手詰まりになっていました。
単なる総当たりではなく、資料調査からシミュレータ開発まで自前で実行
驚くべきは結果の早さ以上に、AIがとった解読プロセスです。AIは膨大な候補を闇雲に試すのではなく、本格的な文献調査と暗号解析を自ら組み立てました。
まず文字がかすれて判読しにくい原資料に対し、歴史公文書アーカイブを探索して複数の転記テキストを照合し、誤読された可能性のある文字を特定しました。さらに、同部隊から送られた前後の関連電報を洗って文脈のヒントを洗い出しました。
それだけにとどまらず、AIは自らエニグマ暗号機のシミュレータをコードで構築しました。あり得る設定の組み合わせを探索するスクリプトを書き、並列で実験を回し続けました。作業開始からおよそ10時間後、暗号文はついに平文化されました。
解読された電報の中身は、部隊が現在地に到着したこと、前進ルートの指示を仰ぐこと、そして無線での至急返信を求めるという、極めて日常的な軍用連絡でした。
今回の作業は完全自動ではなく、人間の研究者が対象を選定し、重要な歴史的背景を提供し、調査の方向性をガイドしていました。しかし、資料の照合、シミュレータの実装、並列計算の実行といった膨大な実務はAIが一手に引き受けました。
なぜ重要か
私たちは、この事例を自律型AIエージェントが高度な学術調査や史料考証の領域へ踏み込んだ決定的な瞬間だと捉えています。これまでのAIは文献の要約や翻訳といった受動的な作業が中心でした。しかし今回は、情報が足りなければ公文書を探し、道具がなければシミュレータを自作し、ノイズのある文字列を確率的に補正するという、能動的な調査ワークフローを完結させています。
専門家にとっての価値は明白です。世界中の公文書館には、解明の手間とコストが見合わないという理由で放置された膨大な未解決記録が眠っています。人間が何カ月も档案室に籠もって行うような泥臭い作業を、AIが半日で肩代わりできるなら、歴史研究や文献解読の生産性は大きく向上します。
一方で、専門知識を持つ人間のナビゲーションが不可欠である点も見逃せません。前提条件や文脈の与え方を誤れば、AIは誤った仮説を信じて計算リソースを浪費してしまいます。それでも、人間の的確な指示とAIのツール自作・並列探索能力が噛み合ったときの威力は、今後の知的作業のあり方を強く予感させます。
情報源 (2)
- cryptocellar.org(新しいタブで開きます)原文cryptocellar.org
- youtube.com(新しいタブで開きます)報道youtube.com