スイス連邦工科大、AI「YOLO」でGoogleのreCAPTCHAv2を100%突破
スイス連邦工科大学の研究チームが、画像認識モデル「YOLO」を微調整し、Googleの「reCAPTCHAv2」を100%の成功率で突破した。約1万4000組の道路画像で訓練し、マウス操作や端末の指紋認証要素も再現した。なお、Google側は大半のサイトが不可視のv3へ移行済みとコメントしている。

ウェブサイトで歪んだ文字を読まされたり、ボヤけた画像の中から信号機や横断歩道を探させられたりする作業ほど、現代のネットサーフィンで煩わしいものはありません。
人間であることを証明するためのそのテストを、AIがとうとう完全攻略してしまいました。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)のAndreas Plesner氏らの研究チームは、画像認識モデル「YOLO」を微調整し、Googleの画像認証システム「reCAPTCHAv2」を突破させる実験を行いました。その結果、テストにおける正解率は100パーセントに達したといいます。
なぜ13種類の標識で見破られたのか
皮肉なことに、AIにとってこのテストを解くのはそれほど難しくありませんでした。出題される対象の範囲が、最初から極めて限定されていたためです。
reCAPTCHAv2が提示する画像は基本的に道路の風景に限られており、車、バス、自転車、信号機、横断歩道など、わずか13種類程度のオブジェクトに集中しています。研究チームは約1万4000組のラベル付き画像を使ってYOLOを学習させました。
もちろん、Googleのシステムは画像の選択だけでなく、マウスカーソルの動きやブラウザの履歴、クッキーといった「デバイスフィンガープリント」も監視しています。
研究チームはこれらの環境要因も模倣してテストを実施しました。100パーセント成功したというのは、すべての画像を一発で正解したという意味ではありません。人間と同じように、判断が難しい画像を拒否して別の画像を表示させながら、最終的に認証をすり抜けることに成功した形です。
Google Cloudの担当者は、2018年に画像テストを出さない「reCAPTCHA v3」を投入済みであり、現在保護している世界700万サイトの過半数は完全に見えない形で動作していると説明しています。
しかし英デモントフォート大学のEerke Boiten氏は、AIが人間と同等の認識能力を持ったことで、今後は行動監視や端末情報の収集がさらに強化されると指摘します。人間が自然な動作だけで人間であることを証明するのが、極めて困難になる時代が来つつあります。
なぜ重要か
一般のユーザーにとっては、不鮮明なタイルを何度もクリックさせられる苦痛から解放される兆しと言えます。手頃な画像認識AIが人間以上の精度で道路標識を拾い上げられる以上、画像認証はもはや防御壁として機能していません。
しかし私たちの見立てでは、この変化はプライバシーの代償を伴います。視覚的な謎解きが破られた結果、セキュリティ企業はマウスの加速度やブラウザのフィンガープリントといった裏側の監視データをより深く追跡せざるを得なくなります。ボットを排除するために、生身の人間がより多くの個人データを差し出す構造になりかねません。
ウェブサービスを運営する開発者側にとっても、従来の画像認証に頼り続けるのはすでに危険です。オープンソースのモデルを少しチューニングするだけで100パーセント突破されてしまう以上、挙動ベースの分析やパスキーといった次世代の検証手段への移行を急ぐ必要があります。
情報源 (1)
- newscientist.com(新しいタブで開きます)原文newscientist.com